第26話 蛇は地下で拾い物をする
『
モンスター討伐率
・総合 CO
▽モブ CO
▽小ボス CO
▽中ボス CO
▽ボス CO
▽裏ボス CO
▽レア CO
▽ネームド CO
設備支配率
・総合 CO
▽レジェンド CO
▽レア CO
▽コモン CO
エリア支配率
・総合 CO
▽エントランス CO
▽通路 CO
▽部屋 CO
▽特殊施設 CO
第7層(エクストラ階層)戦闘力支配率 CO
エクストラ階層支配猶予時間 残り0:00:00』
※CO…CountOverの略。最大値限界突破の意。最弱敵にフルバフ状態で瞬間最大火力技を当てて、存在そのものは確認されている。
この結果を、シズノメが見れば真顔で『バグでっか?』と聞き返し、サタニスならお腹が捩れるほどに笑い転げ、リアル知人ならそっとウィンドウを閉じて見なかったことにするだろう。
いや、それだけならまだいい。まだ戦力があるというだけの話で、他にも出来る者は居るだろう(なお、本当にいるかどうかは別の問題とする)。
*称号・【
*称号・【
*称号・【
(おっっっかしいなぁ~…………。これ、どれもこれも、取得条件が半分以上不明なぶっ壊れ補正付神レア称号だった気がするんだけどなぁ~……)
あっるぇー? と内心、混乱一歩手前ぐらいに頭を抱えているユーラリング(の中の人)。つまりはそれだけとんでもない事をした、という事でもあるのだが、それには気づいていないようだ。
なお、これでも現実逃避している方だ。深々とため息を吐き、さらにしばらく頭を抱えた後、ちら、と目を向けた先。
*称号・【???????】を取得しました*
*称号・【???????】の判明条件を満たしていません*
*称号・【???????】の詳細が隠蔽されます*
(な ん だ こ れ)
ユーラリングが覚えた複雑な感情は、この一言に集約されるだろう。はっきりいって厄ネタの気配しかしねぇ! と現実で叫んだのは別の話だ。なお称号とは、読みの方の「・」の数で序列が決まる、と言われている。つまり上の3つの称号は、並んだ順にすごい、という事になる。
で、称号が詳細不明状態で表示されるときは、その「・」の数で表示されると言う。もちろんユーラリングが称号を得たのは「生まれついての“魔王”」として持っている【魔王:ユルルングル】のみだ。
そしてユーラリングが何度数え直してみても、正体不明の称号の「?」は7個ある。7個。【喪われし神代を継承する者】ですら3個のところを、倍以上だ。
(ど――――考えてみても未発見の
微妙にやけっぱちな開き直りをして、ユーラリング(の中の人)は諦めた。もう既に「生まれついての“魔王”」という特別を引き当てた以上、いくら属性が重なろうが狙われるのには違いない。
そしてウィンドウを閉じて、視線を前に戻した。
「…………で、ヒュドラ。「それ」は何だ?」
『何でしょうね? 梃子でも動かない感じだったんで、地面ごと引っぺがしてきちゃいましたけど』
「あまり洞を痛めるなよ?」
『大丈夫です。どうにも後から付け足されたっぽい部分なんで』
そうか。と端的に返して、ヒュドラが首の1つでくわえてぶら下げている「それ」を観察する。
ぱっと見た感じは鳥にも見えるが、短くも筋肉質な四足は驢馬にも見える。いや、角があるから牛だろうか。しかし爪も見える。熊? と僅かに首を傾げ。
「しかし、珍しい相手がいたものだ。いや、我がこの上に『ダンジョン』を構える前から、この場所自体はあったのだろうから不思議ではないが」
納得を含めて、そんな言葉を零した。ヒュドラが別の頭を傾げる。
『えーと、つまりどういう事です?
「七罪の悪魔の一柱だ。恐らくは「怠惰」の、それも相当に高位の魔物だな。下手すれば“魔王”だぞ」
『はい? これが?』
さらっと告げたユーラリングの言葉に、ヒュドラはまた別の頭でぶら下がったまま寝ている「それ」を覗き込んだ。謎生物にしか見えない。
そんな疑いのまなざし全開のヒュドラと、じろじろ見られても微動だにせず眠り続けている謎生物を見て、ユーラリングは僅かに呆れを混ぜて言い切った。
「当然だろう。ヒュドラ。英雄をすら苦しめ殺した猛毒の血を持つ蛇。「お前の唾液に触れてなお僅かなダメージも負っていない」のだぞ?」
『あ』
「そんなバカげた防御力と耐性を併せ持つ存在がどれ程居るというのだ。そしてその見た目と行動、「怠惰」に属する高位の魔物以外に何がある」
『あ、あー。言われてみればその通りでした。確かにその通りですはい』
覗き込んでいた頭を戻して、ほーへー、と何だかよく分からない息を吐いているヒュドラに、それはともかく、とユーラリングは真面目な顔に戻った。
「とはいえ、無視する訳にも行くまい。しかし正体がその通りだとすると、まともな反応は期待できんな。名を聞くだけで何日と掛かりそうだ」
『うへぇ。いや、「怠惰」の高位な魔物もしくは“魔王”なら納得ですが、手間かかりますねぇ』
「仕事をさせようとするなら、な。当てにできない予備戦力としてならこれほど手間のかからない相手もいない」
『そりゃまぁそうですけど』
ならいなくても良いのでは? との呟きはどの頭なのだろうか。まぁいずれにせよ、ヒュドラなので考えない事にする。ふむ、とさらに数秒ユーラリングは考えて、
「……ま、丁度良いと言えば丁度良い。あの4人をうまく丸め込む口実が欲しかったところだ」
『ぶっちゃけましたね
「口を滑らせたくもなる。全く、潔いんだか意地汚いんだかどちらかにしろ。面倒だ」
『ちょっと殴って来ましょうか』
「止めておけ。文字通り無駄骨な上に死んでも治らん」
『なるほどうまい事言いましたね
誰がうまい事言っただ。とは返さず、ユーラリングはぐーすかと微動だにせず眠っている謎生物、もとい「怠惰」の魔物に向き直った。
「正直茶番ではあるが、形式は踏襲しておくとしよう。
我、汝に同盟を申し込まん。否定或いは疑念があればいかなりと。無音無動作は肯定成り」
『……』
「其の肯定を以って同盟を結ばん。我は宿無き汝に宿る場を与え、汝は我の領域の一部であるその場を守護する契約成り。否定或いは疑念があればいかなりと。無音無動作は肯定成り」
『……』
「その肯定を以って契約を成立させん。この契約と同盟の続く限り我は汝の宿る場を保証し、その破棄は両名の同意と理由に足る証拠を持って行うものとする。否定或いは疑念があればいかなりと。無音無動作は同意なり」
『……』
当然相手は眠っているのだから、何の反応がある訳もない。が、ユーラリングが軽く杖ごと右手をかざすと、問題なく同盟及び契約の印は浮かび上がった。……本人が言った通り、茶番である。
「さてこれでよし。代表者が決定したのだから、当然補佐役の立場は平等でなくてはな。しかも代表者の性質が性質だ。ちゃんと仕事をする者を複数選ばなければ」
『ですねー。丁度いいのがいますしねー』
もちろんそれにツッコむ者がこの場に居る訳もなく、名前も正体も不明な謎の同居人(※ユーラリングの認識)が増えたのだった。
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