第2話 魔剣

 森の中心、広場で足を止めた。


 目の前には地面に突き刺さる太陽に照らされ神々しく光る一本の剣。


 魔剣、もしかして。


「もしかして、お前が俺を……」

「ああ、そうだ。俺様がお前を呼んだ」


 やはりそうだ。

 なんてことだ、剣が言葉を発すだなんて。


「力が欲しいんだろう?」

「ああ、欲しい。その前に、なんで剣が喋れるんだよ!?」

「俺様は剣では無い。魔法により作られた剣──魔剣だ」


 魔法によって作られた剣だと。 

 意味がわからない。


「とにかく、俺様をここから抜いてくれ」

「お、おう」


 魔剣に近づき、持ち手を掴もうとすると、二つの目がついていることに気づいた。


 き、君が悪い……。


「ぬ、抜くぞ」

「ああ、早く抜け」


 両手でつかんで、思いっきり引っこ抜こうとするが、


「ぬ、抜けねえ……」

「この腰抜けがッ、もっと力を使え非力小僧」


 ひ、ひでえ。

 つっても、これで本気なんだけどな……。


「ぐぬぬぬ」


 頑張って抜こうとするが、一向に抜ける気配はない。


「もっと力を入れろ」

「入れてるわ、くそ、全然抜けねえ……!!」


 どうなってんだよ。

 全然抜けねえよ。


「うおおおお……はあはあ、無理だ」


 手を離した。


「諦めるなあああ」


 くっそ、どうやって抜けばいいんだよ。


「……小僧」

「俺は龍崎リュウガだァ」

「リュウガ、俺様と契約しろ」

「はあ? いきなりなんだよ」


 契約ってなんだか怖いな。

 命でも捧げろって言うのか?


「お前の願いを叶える、代わりに俺の主となるのだ」

「はいはい、そういう明らかに俺にしかメリットがない提示は怪しいから認めねえよ」


 俺がこの魔剣の主になることで、この魔剣にとってのメリットなどあるはずがない。

 身体でも奪うに決まっている。


「違う、俺様たち魔剣は魔物を食うことをエネルギーにしている。だが、俺様たち魔剣単体で魔物を倒すことなどできぬ。そこで、リュウガたち人間を使うのだ」


 なるほど、そういうことか。

 って、


「嘘じゃないよな」

「ああ、嘘ではない。信じてくれ、な?」


 な? と言われても信じれるかっつーの。


「さあ、小僧の願いを言え」


 俺の願い。

 それは、一つだけ。


「この世界で最強の冒険者になることだ」

「ふむ、よし、ならだ。すぐには無理だが、リュウガ。お前をそのうち世界最強の冒険者にしてやる」

「ほ、本当か!?」

「ああ、ただ。俺様だけでの力では無理だ。お前と二人でだ」


 得体の知れない生き物に、俺は本当にこいつとならなれると思ってしまった。

 その期待で胸が昂る。


「約束だぞ、魔剣……なんだっけ?」

「魔剣デーモンクレヴだ」

「じゃあ、クレヴ」


 なるんだ。

 ここから、最強の冒険者に。


「ああ、約束しよう」


 俺はクレヴを再度、掴むと、紫色に光出した。


「さあ、契約の時だ」


 光は俺を包み込んだ。

 

 不思議と力を入れずともクレヴを地面から抜くことに成功していた。


 同時に、光が止んだ。


「これからよろしくなリュウガ」

「ああ、俺こそよろしくなクレヴ」


 にしても、剣に目がついてるとか気持ち悪いな、本当。


「本当に俺は強くなれるんだろうな?」

「ああ、何せ俺様たち魔剣は魔物を狩れば狩るほどに強くなるからな」


 へえ、それなら確かに強くなれるな。


「しかも、保持者も契約した魔剣を持っている間は強くなれる」

「ほ、本当か!?」

「ああ、本当だ」


 すると、グウ〜、とクレヴからお腹の音がなった。


「三日間、ここに埋まってて何も食べれてない。よし、リュウガ。今から魔物を狩に行こう」

「わかった」


 これが、俺と魔剣デーモンクレヴとの出会いだった。

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落ちこぼれな努力家冒険者は、魔物を狩れば狩るほどレベルアップする魔剣で成り上がる。 さい @Sai31

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