第2話
17歳の私にとって、学校は戦場だった。
今から大勢を殺す私は、慣れた心持ちで目線だけを動かして周囲を確認する。
朝の駅前ロータリーは通勤・通学する人でごった返している。ふと右に目をやればホテルの中層階の外壁に付けられた電子掲示板に表示された時計が一分を刻んだのが見える。その遠くには錆びれた商店のシャッターを開けて、店を開ける準備をする中年の女性の姿が。さらに左の方向に目をやると、決まった時間に出発するバスの運転手と目が合った。
ふと思い出したかのように正面を向くと、商店の展示窓のガラスの中に映る自分とも目があった。背中まで伸びた灰色の髪には艶が無く、青色の瞳も気のせいか濁っているような気がする。それでも一番気になるのは、絶対に着ることが無いと思っていた、セーラー服つまり学校の制服だった。
学校へ続く大通りの一本道、歩いて十五分ぐらいの距離を友達も居ない私は周りの会話に聞き耳を立てながら歩く。それ以外にすることが無いから。
「うわっ今日の英語小テかよ、だりぃ」
「なぁ放課後の部活さぼらね?」
「今日残って一緒に勉強しない?」
聞き耳を立てていれば学年を跨いで、いろいろな人な会話が聞こえてくる。私は思わずふふっと笑った。こぼれた小さな笑い声は雑踏の中に消えていき、気が付いた者は一人たりともいない。
今日何が起きるかもこいつらは知ることも出来ないし、想像することすらも出来ないだろう。今ある現実がどれほど奇跡的なのかも実感したことが無さそうだ。もし仮に実感したことがあったとして、これから起きることから逃げられるわけではないが。
ずっしりと重い手さげかばんを何気なしに抱きかかえる。革越しに伝わる仕事道具の感触はごつごつとして硬く無機質で、冷たさすら感じる。
私は金さえ貰えばどんな汚い仕事すらも受け入れる傭兵いや殺し屋というべきか?それが仮に子供を殺すことだろうと、友を殺すことだって厭わない。そうやって世界は調和を保っている、という何の根拠もない言い訳を胸に今日も戦場へと向かうのだ。
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