第19話



ザ――――――ーーー


はい。本日は雨でございます。


今日はお互いバイトがないので


先輩が教室まで迎えに来てくれて、これから帰るところです。


下駄箱から出る時に傘を開こうとすれば


先に傘を開いて一歩進んでいた先輩が振り返ってくる。


「?」


「、、、?」


目でお互い疑問を送りあっている。


「なんで?」


「え、何がですか?」


「なんで傘開くの?」


「、、雨が降っているので」


「、、、、」


ん?濡れて帰れと?


本当に先輩と意思疎通ができない時がたまに、、、


いや、良くあります。


「別々に傘さしたら遠い。」


「、、なるほど。入っていいんですか?」


「ん。」


「お邪魔します。」


恐る恐る先輩の傘にお邪魔する。


普通に歩く時よりも距離が近くてドキドキする。


だけど一緒に帰るときは、必ず繋ぐ手が


今は傘を持っているので繋げない。


それはそれで少し寂しい。


そう思い、傘を持つ先輩の左腕に手を絡めてみる。


先輩は一瞬こちらを見ただけで、


すぐ正面を向いてしまったが


確かにその口角が先程よりも上がっているのを見つけ


正解だったと思う笑眞であった。




すれ違う人に、左手にぶら下げた傘を見られると


少し気恥ずかしいが、


右肩を濡らしながら、明らかにこちらに傘を傾けてくれる先輩を横目に


毎日雨でもいいな。なんて思う。


今度からは折りたたみ傘にしようと


思う笑眞であった。








”桃李先輩は相合傘がしたい。”

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