第18話


本日は、この前のお弁当のお礼に


先輩が学食の美味しいと高評価のかつ丼を奢ってくれるそうで


お昼休み、学食で待ち合わせをしていた。


授業が終わり、急ぎ足で学食へ向かえば


人。人。人。


もう桃李先輩がいるのか、いないのか分からない。


連絡をしようと手元のスマホへ目を落とせば


急にその手を引かれる。


誰かなんて、掴まれた手の体温でわかってしまう。


「え、せんぱ「走って」、、了解す」


そのまま走りついた先は体育館裏。


ここは穴場でよく先輩がさぼっている場所。


「?先輩、学食は?」


「ごめん。人が多すぎて、今度にしよ。


代わりに購買でパン買っといた。」


「了解です。」


どうやら、桃李先輩が学食にいると情報が出回り


あの人だかりが出来ていたらしい。


そして桃李先輩が買ってくれていた焼きそばパンを頬張る。


デザートにフルーツサンドも買ってくれたらしい。


これまた買っておいてくれた、甘さ控えめのカフェオレを一緒に頂く。


まあ良く出来た彼氏様である。


早々に焼きそばパン、クリームパン、ウインナーパンを食べ終えた先輩は


無言で私の膝に頭を乗せてくる。


そのまま携帯をいじり始める。


「でも、桃李先輩がいるのに人の少ない学食とかないですよね。」


チラッとこちらに視線を向け


「、、、どうにかする。」


(まあ、学食で別々の椅子に座って食べるよりも


こうして触れ合える方が私は幸せなんですけどね)


なんて思っている笑眞なのであった。


いつの間にか、携帯をいじっていたはずの先輩が


膝の上で眠ってしまっていた。


閉じられた右目のすぐ下にある黒子を撫でる。


そのままサラサラの髪に手を通し


先輩を存分に堪能していると、


瞼がぴくッと動いて薄く開かれる瞳。


眩しそうに細められた瞳と目が合うと


薄く微笑み、頭部に手を添えられ軽く引き寄せられる。


チュッと一瞬唇が触れて、何事も無かったかのように


また閉じられる瞳。


赤面する私だけが取り残された。


寝ぼけた桃李先輩は心臓に悪い。




学食じゃなくて良かったと心底思う笑眞であった。







”寝ぼけた桃李先輩は甘すぎる。”

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