第13話


Tシャツの撮影もあって、服屋をでるのが15時前になってしまった。


「先輩見たいお店ありますか?」


「、、、特にない」


「じゃあ、夕飯の買い出しして帰りますか。」


「ん。」


「夕飯何がいいですか?」


「、、、からあげ」


「唐揚げ。いいですね、唐揚げにしましょう。」


スーパーで唐揚げとお惣菜と


先輩がずっと見ていたパプコを購入し、


パプコを半分こして帰宅している道中。


前方から超絶美女が歩いてくる。


すごいスタイルいい人だなー。モデルさんとかかな?


なんて思いながら見ていれば、


その美女は足を止め、「桃李?」


まさかの先輩のお知り合いだった。


しかも名前呼び。これはもしかすると、、、


元カノさんかな?



足を止めた先輩につられ、私も足を止める。


「桃李の彼女?」


「ん。」


「へぇ~。ずいぶん綺麗な子ね。」


超絶美女に言われると、なんだか居たたまれない。


「こんにちは。」と一応挨拶してみる。


「こんにちは。」にっこり作り物のような完璧な笑顔で返される。


「じゃ、帰るから。」


そう手を引かれ、会釈をしながら通り過ぎようとすれば


美女に手を引かれ引き止められる。


耳元で「桃李、背中の黒子が弱点なの変わってないかしら?」


「もし知らなかったら試してみて♪」


と完璧なマウントを取られる。


固まっていると先輩が「?」


不思議そうな顔をした後、また手を引いて歩き出す。


ぼーっとしたまま先輩の家に着く。


なんだろう。モヤモヤする。


背中の黒子、、、、


そもそも知らない。


いつも寝るときは私の背中側に先輩がいるし、


背中を見る機会が今までなかったことに気づく。


モヤモヤしたまま食材を冷蔵庫に入れていれば


「笑眞?疲れた?」


いつの間に傍に来たのか、顔を覗きこまれていた。


「いえ、なんとなくボーっとしちゃって。」


そう返せば、手を引かれソファに誘導される。


そして足の間に私を座らせると


私の頭に顎を乗せ、


「ちょっと休もう。」


そう言い、TVを見だす。


そうされている間もあの美女の顔が浮かんでは消えていく。


堪らなくなり、振り返り


Tシャツに隠された鎖骨の黒子を、


裾を引っ張り見つけ出すとそこに嚙みついた。


あ。桃李先輩が固まっちゃった。


なんとなく顔を上げづらくて、そのまま鎖骨の黒子に口づけていれば


急に肩を引かれ離されたと思えば


仕返しのように、口元にある黒子に口づけされる。


そして目を覗きこまれ、無言で見つめあっていると


近づいてくる顔。


キスされる。そう思い目を瞑れば


予想外に鼻に痛みが走り、鼻を齧られた事に気づく。


「いっ」ガブ。痛いと口に出す前に唇を食べられた。


そのまま体を抱き寄せられ、先輩の部屋に連行された。


なんだか今日の先輩はいつもより余裕がないように見える。


余裕ないのは私の方だったのにな。


いつもは割れ物を撫でるように触れる手も


今日は少し強引だ。


まるで待てないというように、いつもより早めに繋がる。


汗が似合わない先輩の顎先から汗が垂れてくる。


それがやけに官能的で、映画のワンシーンを見ているような気分になる。


この先輩をあの美女も知っているんだろうか。


そう思うと胸が締め付けられ、


無駄に鎖骨に口づけをする。


この黒子は私のものだと主張するように。


そして、ボクサーパンツを履く先輩の後ろ姿を盗み見れば


右の肩甲骨にある黒子を見つける。


恨めしくなって、その黒子を指で押してみる。


と、ビクッと肩を揺らす先輩。


そしてイラついた表情で振り返る。


その反応に更に胸が締め付けられ、


泣きそうな顔でその黒子を隠すように


初めて先輩にキスマークを付けた。


「、、、、」


振り返った先輩に捕まる。


頬を片手で掴まれると、グイっと後ろを向けられ


うなじに噛みつかれる。


え、、、なんかいつもよりいた、、


「いたい、いたい!いたいです先輩」


ようやく離した先輩は労わるように最後に一舐めし


今度こそズボンに足を通す。


一体なんなんだ。


20:00 先輩ご所望の唐揚げを完成させ


2人で食べる。


「美味しいですか?」


「ん。」


お気に召したようで、満足げな返事が返ってくる。


(練習しといてよかった)


21:00 一緒にお風呂へ入ろうとする先輩を


目で制し、1人の入浴タイムを堪能する。


22:00 私と入れ違いで先輩がお風呂へ向かう。


22:20 髪がビチョビチョの状態でリビングに帰ってきたので


問答無用で先輩の髪を乾かす


22:30 先輩が入れてくれたココアを一緒に飲みながら


マルオカートを始める。


5回戦ほどやった頃眠気が襲ってくる。


「ふぁぁ」


「もうそろ寝るか」


「はぃ」


隣に並んで歯磨きを済ませ


先輩とベッドに入り就寝


なんとも健康的である。


眠りにつく寸前


先輩がうなじに口づけたのを感じた気がした。









”桃李先輩は彼女も知らない彼女のうなじの黒子がお気に入り。”

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