第9話
「いらっしゃいませ~只今クロワッサン焼きたてでご提供しております。」
現在、新堂 笑眞はパン屋のバイト中です。
バイトの制服というものはなく、
エプロンと、頭の三角巾だけ被ればいいので
放課後は制服の上に着用してバイトしています。
ただ、最近平日でも着替えを持参しようか迷い中です。
「クロワッサン焼きたてだってよ。うまそ~」
「ていうか、あの子T高じゃん。声かける?」
「まじでタイプすぎて話しかけれん。」
いや、ゴリゴリに聞こえてます。
こういうのが最近多すぎて困り果てている。
パンを買ってくれるのは有り難いが、
そういうのは本当にやめてほしい。
クロワッサンをもって2人組の男がレジに向かってくる。
制服をみると近くのS高のようだ。
「お願いします。あの、お姉さんT高ですよね。何年生ですか?」
「ありがとうございます。2点で310円です。2年生です。」
「PAYPAYでお願いします。え、てことは同い年っすね!」
「QRコードの読み取りをお願いします。そうなんですね。」
「えっ彼氏とかいます?よかったら連絡先教えてください!」
ーーーカラン、、、、
「そういうのはちょっと、、いらっしゃいま、え?」
「いらっしゃいました。俺の彼女なんでやめてもらっていいですか?」
「ぅえ?!T高の桃先輩?!え?!どういうこと?!」
「お耳が悪いようなのでもう1度だけ言う。俺の彼女だから気安く話しかけんな。
パン買ったらさっさと散れ。」
「失礼しました!!」
ーーーカラン、、「ありがとうございました~」
「ありがとうございます。ナイスタイミングです。」
「いつもこんな感じなの?」
「うーん、いつもってほどじゃないですけど、たまに?」
「制服で働くのやだ。」
「私も最近考えてたんで、次から着替え持参します。」
「ん。」
そして何事もなかったようにパンを選び出す。
選ばれたのはチョコクロ5個入と、塩バターパン、フランスパン。
「そういえば今クロワッサン焼きたてですよ。」
「ん。クロワッサンも持ってくる。」
「クロワッサン食べてきますか?」
「ん。」
「了解です。じゃあクロワッサンイートイン用で用意しますね。」
会計を終わらせ、イートイン用に皿にクロワッサンを乗せ、
注文にはない先輩の好きな甘いカフェオレを一緒に持って
店の一角にある席に腰かけている先輩の元へ運ぶ。
「お待たせしました~」
「ん。、、カフェオレありがとう。今日何時まで?」
「閉店から締め作業して、、19時くらいだと思います。」
「ん。食べ終わったら向かいのスタボで待ってる。」
「え!ありがとうございます!」
「ん。頑張って。」
「はい!」
19:05少し遅くなってしまって
急いでスタボへ行くと、見ていたかのようなタイミングで
お店から飲み物を2つ持って出てくる先輩。
「お疲れ様。」
「お待たせしました!」
そして当たり前のように私の好きな甘さ控えめにされたカフェオレを手渡してくる。
「ありがとうございます。」
と笑顔で伝えれば満足そうな顔をする先輩。
「鞄貸して。」
「ん?大丈夫ですよ?」
「飲みにくいでしょ」
「そうでもないですよ?」
「右手繋ぐのに?」
「あぁ、、、でもそうすると先輩が飲みにくいんじゃ、」
「俺は男だから大丈夫。」
これは、、きっと譲らないだろうなと思い
「ありがとうございます。」と鞄を差し出す。
「ん。」
そして右肩に私の鞄をかけ、飲み物を持ち
左手は私の右手に繋がれる。
いつもこうして気にかけてくれる優しい人。
”桃李先輩は気遣いがうまい”
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