第5話

今日は先輩の両親が不在ということで、


お泊りをしに来ている。


同じベッドで後ろから抱きしめられながら


ふと先輩の好きなところを考えてみた。



例えば、黒いサラサラの髪とか、


目にかかる前髪を鬱陶しそうによける時の表情とか、


優しく微笑んだ時、少し上がる右目の泣黒子とか、


誰よりも優しい声で、大切に私の名前を呼ぶ声とか、


薄い唇に隠された、小さめの歯とか可愛い。


鎖骨の黒子を隠すためにボタンは第2ボタン以上外さないとことか、


まくられた長袖のシャツから覗く、筋張った腕とか、


ゴツゴツした、細めの指とか、


ネクタイを綺麗に結べることを特技にしているとことか、


丈を合わせるためにズボンを下げる仕草とか、


教科書は持ち歩かないくせに、ハンカチは忘れたことないとことか、


少し気だるげに歩くとことか、


ちょっと猫背なとことか、


少し跳癖のある襟足とか、


色々考えてたらたまらなくなって振り返り、


今は上半身裸で晒されている右鎖骨にある黒子に口づけると


目を覚ました先輩が、仕返しと言わんばかりに


私の口の右下にある黒子に口づける。


そのまま噛みつかれるようなキスをして、


2回戦目が始まる。


あ、このちょっと余裕のなさそうな目も好き。


いつもの温度を感じさせない目が、私を見逃すまいとしているようで、


汗をかくのは嫌いと言っていた先輩の


少し汗ばんだ背中に手を回す。


このごつごつした、意外と逞しい背中も好き。


と、まあ好きなところが尽きないことが分かった。




「なに?なんか余裕そう。」


「え、そんなことなっ」


イラついたように噛みつくようなキスをされて


先輩の口の中に言葉が消えていく。









”毎秒、好きが増えていく。”

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