第31話
「こんな変人置いてけ。帰るぞ莉子、駅まで送る」
「あ、待って雪くんお金!」
「美花さん払ってくださいよ。どうせ散々遊んだんでしょ」
「怒んなってぇ。あは、可愛い後輩には奢ってあげよう」
「美花ちゃん先輩、ご馳走様です!」
雪くんの言葉に、先輩はヒラヒラと手を振った。か、カッコいい!隣から呆れたようなため息が聞こえた気がしたけど気にしない。
それにしても、と彼女は雪くんを見上げた。
「雪くぅん、同棲するくらいの腹はくくりなよぉ」
「……」
「返事はぁ!?」
「美花ちゃん先輩、あんまりいじめないでくださいよー。怒りますよ!私が!」
「あはは!莉子ちゃんが!」
彼女はまたしても豪快に笑う。だいぶ酔ってらっしゃるな!?
一人にするのが不安になって席に戻ろうとした私を雪くんが止めた。
「いいよ、あの人どうせ酔ってないだろうから」
「アレで!?」
「遊んでんだよ。いい趣味してるわ、ホント」
もう一度先輩の方を見る。ニコニコと笑う彼女は確かにいつもと何ら変わりないように見える。
「まぁ、次はもっと面白い話期待してるわねぇ」
「次は俺も一緒に行きますから」
「あら楽しみ」
2人の会話の空気がちょっとだけピリついている。なんで?
次、次かぁ。どんな話をしようか。どんな話ができるだろうか。
私たちは離れてからも連絡を取り続けていて、大学に入ってからはもっと一緒にいる時間が増えた。こうやって迎えにきてくれたり、学科のアドバイスをしにきてくれたり、なんでもない日に会うような『恋人』っぽさはないけれど、そういうのはまだお楽しみ。
――でも。
「行くぞ、莉子」
「うんっ!」
差し出された手を取るのは自然になったかな。
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