第30話

「で、どうなのよ。それから雪くんとは」

「……聞きたいですか?」

「聞きたぁい!」



 古今東西、女の子というのは恋バナに目がないのである。身を乗り出した彼女は目をキラキラさせながら、焼き鳥をかじった。



「美花ちゃん先輩に追加情報です」

「なによぉ」



 ニコニコしちゃって。楽しそうで何よりですよ。全くもう。



「私、まだ彼氏できたことありません」



 __数瞬。



「あっははは!!マジでぇ!?」

「マジですよ。大マジです」

「ッはは!……はぁ。ま、知ってるけどねぇ。アイツが佳作までしか取れてないって。ふふっ」



 先輩の大爆笑が店内に響く。何事かとこちらを見る店員さんに軽く頭を下げてお水を頼む。そろそろお開きにしないとヤバいかも。

 助けてー、雪くーん。そこ、ニヤニヤしないでください!



「何考えてるか当ててやりましょうか」



 突然後ろから聞こえた聞き慣れた声にバッと振り向く。そこには雪くんが呆れた顔をして立っていた。救世主だ!

 運ばれたお水を飲んで、頬杖をつきながら先輩が雪くんに声をかけた。



「噂をすれば。万年佳作くんじゃん」

「なんですかその不名誉極まりない名前は」



 お、嫌そうな顔。

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