きゅう
第29話
「……と、いった具合です」
「なぁんでアタシが卒業した途端そんな可愛いことやってんのよ」
時は変わって、雪くんが卒業して1年後。私はサークル勧誘にて再会した美花ちゃん先輩と居酒屋に来ている。
目の間に座ってジョッキを煽る彼女はとても美しい。高校の時よりもずっと綺麗になっていて少しドキドキしてしまった。これが大人の魅力……!
結局私もカメラに魅せられて、雪くんの後を追って同じ芸術大学に進学した。
受かるまで彼には秘密にしていたから、同じ学校へ行くって言った時すごく驚いてたっけ。
「しかしまぁ変わったもんねぇ」
細くしなやかな指がテーブルに乗せられた写真の束をなぞる。ネイルが居酒屋の電気でキラキラ光ってとても綺麗だ。背景のおじさん達すら気にならない。うーん、顔が良い。
その写真たちは私が高校3年生の時にこっそり始めたお仕事だ。と言ってもお客さんは友達ぐらいだけど。
束にあるのはどこかの田んぼ道やベンチで丸まった猫などの写真。一見何かわからない写真だけど、私はその人だけがその意味が分かればいい。と思う。
「『思い出写真屋』。思い出を写真にするんじゃなく、写真自体を思い出に。……いいじゃない」
「ほんとですか!?」
「デザイン科トップのアタシが言うのよぉ。自信持ちなさい」
伊達にマネジメントの授業も取ってないわよ、と彼女はパチンとウインクしてみせた。
美花ちゃん先輩は、将来デザイン面からのアプローチを考えていて、片っ端から講義を履修しているらしい。全知全能にでもなるつもりかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます