はち
第26話
バタン、と音を立ててドアが閉まる。玄関で、俺は渡された写真を手に立ち尽くしていた。
彼女は会いに来てくれた。恐らくアイツに家の場所を聞いたんだろう。……わざわざ3年の教室に行って。
覚えてすらいない『感動』に縋って、莉子を突き放して傷付けて。俺は一体何がしたかったのだろうか。
力のこもった手の中の感触を思い出して、ふとソレを見た。あの日、2人で出かけた時の写真だった。
彼女はようやく撮れたと喜んでいた。俺も嬉しかったはずなのに、どうして1人で立ち止まってる? 彼女はもう一度俺の絵が見たいと言ってくれたのに。
「変わらなきゃ」
差し伸ばされた手を掴むのは怖い。だって俺はその手が簡単に振り払われることを知っているから。
そんなことに怯えてちゃ、ダメだろ。
キャンバスを立てて、絵筆を握った。
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