第20話

「――きくん、雪くん!」

「……え?」

「こんなところで寝てたら風邪ひいちゃうよ!」



 2人で出かけた翌日。正直に言えばアレも個人的な気分転換のひとつだったが、思い返せば莉子の思考の片鱗が見えた気がするし、まぁ悪くなかったんじゃないだろうか。少し様子がおかしかったが、いつものことだ。

 過ごしやすい気温になってきたからか、俺は少し眠ってしまっていたらしい。



 「あ、あのね」



 感じたのは、ほんの少しの違和感。待ちきれないとでも言いたげな表情をした莉子が、何故か照れたように言い淀む。

 珍しいこともあるもんだ。いつもなら俺が宥めても聞く耳を持たないというのに。――いつも、なら。



「写真、撮れたの」



 しあわせな夢は終わったのだ。目を覚ませばそこには目を逸らしたくなるような現実しかない。



「…………は?」



 そういえば、あの時。初めての感動を味わったあの絵。

 どんな絵だったか。俺はそんな無関係なことを考えていた。

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