第19話
あの少女――莉子と出会ってから、何かが変わり始めた。はじめましてこそ最悪だったが一緒にいれば彼女の性格が分かって、少しの心地よさを覚えるようになった。
「変わったね〜オマエ」
昼休み。放課後は忙しい、と誘いを断ると、数少ない友人はニヤニヤと笑った。
人の机にお菓子を広げるな。差し出されたチョコは大人しく受け取っておくが、許可したわけじゃねぇぞ。
「なんだよ」
「いや〜?写真部の子っしょ?あんな嫌そうにしてた割に、最近は満更でもなさそうだな〜とか思ってねぇよ」
「言いたいことがあんなら言え」
「あははは、は、あ、ギブ、ギブギブギブ!」
馬鹿なことを言おうとしたソイツの頭をわしづかみにすると、ペシペシと軽く腕を叩かれる。
イテェ、とぼやいてるがお前の場合自業自得だからな。
「ま〜いいことなんじゃねぇの?」
「だから何がだよ」
笑って誤魔化すなよ。という思いを込めて睨むと、慌てて口を噤んだ。と思えばソイツは一瞬でまたにやけ面を晒す。
「オマエ、楽しそうだし」
見透かしたように笑うコイツが嫌いだ。
猛暑日に水を浴びる花や、大空を自由に飛び回る鳥が綺麗だと思えた。今まで何も感じられなかった全てに、少しずつ何を意識できるようになっていた。
少しだけ、莉子の言っていることがわかってきた気がしていた。
未来が楽しみだと、思えた。
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