ろく

第18話

初めてだった。あんなにも心を動かされたのは。

 そんな漠然とした『感動』だけが俺の記憶に蔓延っている。


 あんな風に、俺も誰かを感動させられるような絵を描きたい。幼くて、馬鹿で、考えなしの俺は愚かにもそう思った。



「雪くんスケッチとかデッサンは上手だけど……ね」

「本人には言えないけど『それだけ』だな」

「まぁ、いつか気づくでしょう。それまで夢を見せてあげるのも仕事よ、仕事」



 通っていた絵画教室に忘れた画用紙を取りに戻った時、先生たちがそう話しているのを聞いて。俺は。

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