第12話
「……才能ねぇな」
「わかっててもちゃんと言われると悲しい」
スケッチブックに描いた私の傑作を見た雪くんはしみじみと呟いた。うー、悔しい。
スケッチブックのど真ん中にはなんとも言えない花――花かなコレ、うん、花だ、――が鎮座している。
カラフルになった筆を置いてチラリと雪くんの手にあるカメラを見る。花壇に、鳥に、蝶に。ぐ、上手だ。
「何で雪くんはカメラも上手なの」
羨ましいことの例えを『隣の芝生は青い』って言うんなら、これはそんなもんじゃない。言わばこれは『隣の芝生でバーベキュー』ってヤツだ!
……おなかすいたなぁ。
「莉子、ろくなこと考えてねぇだろ」
「えぇ!?ま、まさか!」
雪くんのジトっとした視線に気づいて慌てて首を横に振る。め、滅相もございません。
「つーか、特別上手ってわけじゃないだろ。オマエだって被写体が撮れないってだけで技術は十分だと思うぞ」
「……今日どうしたの?」
「あ?気分だ気分。ンなこと言ってると2度と言わねぇからな」
撮った写真を消そうとしているのを慌てて止めて、カメラと筆を交換する。あー、安心感。
雪くんはもう一度私の絵を見ていた。恥ずかしいからそんなにまじまじと見ないでほしいかな。
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