第9話
「そもそも何で撮れないんですか。撮るくらいなら俺でもできますよ」
「だ、だって……」
「自分の目で見たいから、だけにしては撮れなさすぎでしょう」
その通りでございます……。でもこれは言葉にするのが難しいのです。ずっと私の中にあって、それでも解決できない想い。うーん。
あ、そうだ!
「たとえばさ、こう、指で四角を作るでしょ?」
「……はぁ」
「ファインダーがこの四角だとして、この外にはみ出した世界はどうなっちゃうの?」
「写真には不要な部分ってことじゃないんですか」
「でも私の想いはこの外の部分にもいっぱいあるんだよ!」
私の説明に沿って雪くんは目の前に四角を構えた。雪くんみたいに冷静に考えられれば、もっと『良い』写真が撮れるんだろう。でもそれは私にとって『良い』ものじゃない、かも。と思う。
私が見て、感じた想い。写真の外に溶けていく想い。
「だったら、この想いはどこに消えちゃうんだろ」
私だけが知ってる想いが消えちゃったら、それはきっと悲しい。
「……それだけで、こんなに一生懸命に?」
「え?」
ふと雪くんが何かを呟いた。顔を上げると彼は私を見てどこか呆然としていた。なんだか少し傷ついた、みたいな。そんな顔。
私が呆気に取られている間にいつもの雪くんに戻っていたから、見間違いだったかもしれない。
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