さん

第8話

翌日の放課後、カメラを持って花壇へ行くと、昨日と同じように雪くんがスケッチブックを広げていた。



「雪くん!」

「……こんにちは、本当に来たんですね」

「もちろんだよ!」



 ため息をつきながらも隣を開けてくれたのでチョコンと座る。カメラを構えてファインダーを覗く。やっぱり綺麗だなー。

 ついでに昨日から気になっていたことを聞いてみる。



「そういえばさぁ、何で敬語なの?」

「俺からすれば初対面の、一応年上に、タメ口で話すほうが理解できないですけど」

「雪くんに敬語って考えただけでなーんか違和感……?」

「あー、俺の威厳がそもそも、みたいな感じですか」

「そうじゃなくてー……」



 もっと身近な感じがするんだよなー。先輩っていうより友達って感じ。

 そのまま伝えると雪くんは顔をしかめた。



「俺は友達ではないですよ」

「同盟だもんね!」

「いや、それも承諾した覚えないですけどね」



 雪くんの呆れた顔、この2日間でいっぱい見た気がする!不本意だけどね!

 私が同盟を認めさせようと口を開こうとして、彼の声に阻まれる。



「信用した人にしかタメ口なんて使わないですよ。いろいろ、面倒でしょ」



 話は終わりだと言うように雪くんは口を閉じた。むむ、手強いぞ。

 むくれる私を気にせず彼は手を動かして絵を描いている。迷いのない動きはさすが3年生と言えますね。ふむふむ。


 私がカメラの設定をいじりながらファインダーを覗いていると、カタン、と筆を置いた雪くんが私を眺めていた。

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