第6話

「特訓しよう!」

「嫌です」



 即答。まさか断られると思ってなかったからダメージがすごい。

 何を察知したのか雪くんはスケッチブックを盾に私から距離を取って座り直した。



「雪くんも困ってるって言ってた!」

「アレはそういうんじゃないんですよ」

「ねーやろうよ、特訓!……あ、いいこと思いついた!」



 ヒラメキのままに雪くんに畳み掛ける。けど、私のヒラメキ宣言に彼が嫌そうに身を引いた。

 ほんとにいいことなのに!ピンッと人差し指を立てて、気持ちは世紀の大発見!



「へたっぴ同盟、とかどう?」



 めちゃくちゃに呆れた顔をされたけど、諦めないぞ!



「私は写真の練習がしたい。雪くんは絵の練習がしたい。ね、一緒じゃん!へたっぴ同盟、どう!?」

「どうって……まぁ、目的は同じですけど……」



 勢いよく雪くんの目の前にズイッと近づく。雪くんは私を押し返しながら少し考えると、小さく頷いた。

 おやおや?これは?思わずニマーッと笑うとまたしても彼の目が死んだ。あれ、おかしいな。



「へたっぴ同盟は置いといて、練習くらいなら付き合いますよ。そのかわり俺にもアドバイスしてください」

「私?あんまり上手に描けないよ?」

「そんな期待はしてません。普段絵を描かないからこそ、わかることがあるんじゃないかと思って」



 ちょっとだけ意地悪言われた気がするけど気にしないとして、これっていいって事?だよね?



「よろしくね!雪くん!」

「……お手柔らかに」



 雪くんが苦笑いしながら私を見やる。明日の放課後に予定がひとつ入るだけでこんなにワクワクできるなんて。楽しくなってきた!ね、シロクマさん!


 ギュッと抱きしめられたシロクマさんは、さらにくたびれた顔をしているみたいだった。

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