いち

第2話

「どうすればいいと思う?」

「莉子っていつも急だね」



 もう慣れたけど。と続ける友達の顔をジィッと見つめる。あ、ほっぺにご飯粒ついてる。

 私の視線に気づくと彼女は缶バッチがたくさん付いたリュックからティッシュを取り出した。


 中央にデカデカと主張している妙にリアルなモアイの缶バッチは、私からのプレゼントだったらしい。全く記憶にないなー。



「で、今日は何?」

「写真、撮れないの!」

「もう2年生だよ私たち。1年前も同じこと言ってなかった?」

「不思議だね」

「本当にね」



 一呼吸置いてメルヘンなピンク色のいちごミルクをちゅーっと吸うと、目の前に卵焼きを差し出されたのでパクリと頬張る。次に肉団子、シメはウサギの形したリンゴ。


 ひとしきり餌付けして満足したのか、友達は緑茶のペットボトルを傾けた。うーむ、渋い。



「……秘策を教えてほしいか?」

「ぜひ〜」

「対価は購買のアップルパイでどうじゃ」

「一昨日の課題見せてくれた時もそれじゃなかった?」

「最近好きなの、生地はサクサクで中のフィリングは」

「ね、秘策は?」



 お菓子づくりが趣味な子に、お菓子の話は簡単にしないほうがいい。また一つ賢くなっちゃったな。


 唐突に始まった寸劇も一瞬で消え去って、私たちは顔を近づけて小声で話す。



「体育倉庫裏の花壇、わかる?」

「……日当たり最悪なところ」

「そう!だけど綺麗に咲いてるんだよ!」



 ――キーンコーンカーンコーン



 昼休みの終わるチャイムがちょうど私たちの秘密の会話の邪魔をする。

 面白くなさそうに唇を尖らせた彼女はお弁当を片付けながら私をビシッと指差した。

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