おそろいの恋

@yuzu_riha06

第1話

『ねぇ、葉琉』

「なに?」

『葉琉の目って宝石みたいに

澄んでて綺麗なんだね』


俺のコンプレックスである目について

自己紹介を終えたばかりの深優は

俺と同じ目をしていた


「ありがとう

でもそんなこと言ったら

深優も同じ目をしてるよ」

『ほんと?嬉しいな〜』


表情が読み取れない顔をしたかと思えば

雪が落ちてきてるように

静かに笑顔を見せた


「嬉しいって、言われたことないの?」

『あるけど、言われたことじゃなくて

葉琉とおそろいなのが嬉しいの』


今思えば

深優はおそろいが好きだった

他の友達には理解されないような

不思議な見た目のストラップだって


『え、可愛い!私も買う!』


初めて開けたピアスだって


『それ初めてつけたやつ?

いいね私もそれにする!』


何でも俺と同じのにしたがって

時には色違いも勧めてみたけど


『違うのやだ!』


なんて怒った顔をしておそろいにしていた

理由なんて分からなかった

ただおそろいが好きなんだとしか思わなかった

でも今になって深優がおそろいに

こだわる理由がわかった


深優は【おそろい】が好きなんじゃなくて

【違い】が嫌だったんだって

彼女は周りと違うことで

両親を無くし友達もいなかった

そんな彼女は両親が居なくなったことを

自分が周りと違うから

そう思い始め

1人になっていた

いつもはつけていると

後から教えてくれた

茶色のコンタクトを

外している彼女と出会って

その目に惹かれて気づけば

俺から話しかけに行っていて

そこから彼女とは仲良くなり

元から友達が多かった俺といることで

自然と彼女の周りにも友達が増えた


そして【おそろい】が好きだった彼女は

急におそろいにしたがるのを辞めた

俺がおそろいにしようと言っても

何も読み取れない表情で

ゆっくり頭を振るだけ

だから俺も何も言わず

おそろいになることを

避けるようになった


久しぶりに2人で帰る途中

彼女は呟くようにかすれた声を出した


『なんで私はみんなと違うのかな』


意味なんて分からなかった

何も知らなかった俺は

また誰かになにかされたのかと思い


「みんな同じだったら

きっと俺たちはあの時

出会ってなかったよ

違いがあるから

その人だけを好きになって

違いがあるから

その人のことを知りたいって

思うんだと思う」


なんてカッコつけて言ったけど

あの時の俺は何も知らなすぎていたと

わかった


春休みがあけてから

連絡が取れず彼女の家すら

知らない俺は何もすることが出来ないまま

彼女の友達から

彼女が亡くなったことを聞いた

亡くなってから1ヶ月後のことだった


久しぶりに2人で帰った時

彼女は病気で余命宣告をされた後だった

その事を聞いてからわかった

違いが嫌いだった彼女が

どれだけ怖かったか

周りの友達は元気なのに

自分だけ病気になって

自分だけ余命宣告をされ

その場に誰もいなくて

1人でその説明を受けた彼女が

どれだけ泣いていたか

なんで分かってあげられなかったのか

たくさん後悔した

でもそんなの俺の勝手でしかなくて

気持ちが落ち着いてから

友達と彼女のお墓参りに行った

俺とおそろいにしたもの全てを

持って彼女に会いに行った

お墓に近づくとそこには

俺の手の中にあるものと

同じものが置かれていて

きっと彼女の友達か誰かが

置いていったのだろう

綺麗なまま保たれて

置かれているその横に

俺の手の中のおそろいを

置いてあげて

初めておそろいにしたピアスだけは

俺が持ち帰って

片方ずつ耳につけてある

彼女がいたことを忘れないように

別れても決して1人にならないように

違う事に悩まないように

そんな願いが届いたのか

耳についたピアスが優しく揺れた

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