第9話 帝国騎士ルージュ・フラム〜アオバラを求めて〜編②
「……くっ、強い……!」
「ふっふっふ〜弱いねぇ、ふたりとも」
僕と梅はチェシャ猫との勝負に惨敗していた。チェシャ猫はニヤニヤと笑っている。負けたペナルティは本当になかったがものすごく悔しい。
「アリスはやらないの〜?」
「アリスって僕のこと?」
「そうだよ。異世界人をボクたちは“アリス”って呼んでるんだよ〜」
「勝負事は控えてるんだけど、ルージュくんや梅さんの仇討ちをすべきかな?」
「そうそう〜楽しまないと損だよぉ?」
「僕が勝負したら、つまらなくなっちゃうよ?」
「え〜それってどういうこと〜?」
「僕、めちゃくちゃ勝負事に強いんだよ」
「なら、やろうよ〜ね?ね?」
大樹にチェシャ猫がおねだりをしている。顔や身体を消したり、変な角度にしたりして器用なやつだ。
「大樹、頼めるか?」
「我からも頼む」
「ルージュくんと梅さんに頼まれたらやるしかないよね」
その言葉にチェシャ猫がにんまりと笑う。
「先に言っておくよ。僕はイカサマをしないし、イカサマよりも強いからね?」
☆
「ーーナチュラルブラックジャック!」
「ま、また??何回目〜?」
「10は超えてるな」
「大樹、ナチュラルブラックジャックしかでてないのではないか?」
大樹はチェシャ猫に大勝していた。
イカサマを疑うほど手札は揃い、勝利を引き寄せた。
「僕は勝負事に負けたことがないんだ。僕は賭けに絶対勝つんだよ」
「……なるほど。それが大樹の能力か。幸運、いや、ここまで来ると豪運だな」
「にゃ〜降参降参〜ボクに勝ち目はなさそう〜ここまで負けたのは初めて〜」
ぽんとチェシャ猫は人間の姿に変化し、楽しかったよ〜と笑った。
「いいとこに連れて行ってあげる〜ついてきて〜」
軽やかに歩き出すチェシャ猫があ!と声を出し、僕らの服に触れる。ここでの服装だよと赤と黒の衣装に変える。アリスは水色だよと笑っていた。
「どこに行くんだ?」
「ひ〜み〜つ〜」
でも、いいとこ!と先導するチェシャ猫を僕らはとりあえず信じてみることにした。
☆
「みんな、大丈夫?」
「わたしは大丈夫だよ」
「あたしも平気」
「わたくしも大丈夫です」
俺と一緒になったのはクロユリ、桔梗、コスモスだった。
見事に戦う力を持たないメンバーが集まっていた。
「だいぶ、偏っちゃったね。俺たちは極力戦いを避けなくちゃ」
俺の言葉に全員が頷いた。
辺りを見回してみると赤と黒の光景が広がっていた。
「これって、“不思議の国のアリス”、だよね?」
【異世界ではこの世界のことをそう言うのだな】
「クローバー!咄嗟のアドバイスありがとう」
俺がクローバーにお礼を言うとクローバーが笑う。
【さぁ、ここの世界はワタシが案内しようか。まずは目立たないよう衣装替えとしようか】
赤と黒のドレスとタキシードに衣装替えしていた。
「……ね、桔梗。プロテア様、カッコいいね」
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