第9話 帝国騎士ルージュ・フラム〜アオバラを求めて〜編①

「……不思議な感じだな。あんなに探し求めたアオバラに今から会えるだなんて」

 緊張で僕はカタカタと震えていた。

 大丈夫だよとひまわりが隣で笑ってくれている。

 今いる花姫と仲良くなれたが、まだ眠っている花姫たちは僕のことをよくは思っていないだろう。なぜなら僕はプロテアと敵同士だったんだから。


「……これがアオバラの絵か。幻想的で綺麗だな。ひまわり、アオバラはどんな人なんだ?」

「いい子だよ。それにすごく美人さん。まぁ、結構天然ちゃんだけどね」

「僕に力を貸してくれるだろうか?」

「ルージュが先に手を貸してあげたらいいんじゃない?アオバラはきっと騎士団を探しに行くだろうからさ」

「騎士団なんだな、アオバラは」

「そうだよ。赤、白、ピンク、黄色、オレンジ、青の6人なんだ」

「……なんだか、強そうだな」

「強いよ。彼女たちが王様たちを守っていたんだよ」

「ルージュ、準備はいいか?」


 プロテアが声をかけてくる。大丈夫だと告げ、全員で絵の中に入ろうとしたときだった。空間がぐにゃりと歪む感覚がした。


【ーー敵襲だ!そばにいるやつの身体を掴め!ひとりになるな!】

「おや、クローバーじゃない?久しぶりだね」

【ダイヤか!なぜ、こんなことをする!】

「さーてね?自分がよくわかっているんじゃないのかな?」


 みんなが散り散りに飛ばされていく。


「みんな!目印はアオバラで!」


 プロテアがそう叫んでいた。


 ☆


 僕が目を開けるとそばにいたのは梅と大樹だった。

「ふたりとも怪我はないか?」

「我は無事だ」

「僕も無事だよ……でも、ごめんね。僕は無力だから力になれなさそうだ」

 申し訳なさそうにする大樹に僕と梅は大丈夫だと返す。

「攻撃特化の僕に防御特化の梅、なかなかバランスはいいんじゃないかな?それにXが利用しようとした大樹に何も能力がないとは思い難いしな」

「それには我も同感だ。娘ふたりに能力があるのだから、尚更能力があると思うべきだろう」

「それならいいんだけどね……って、なんだかカラフルは場所だね?」


 ぐるりと周りを見回すと赤と黒の世界が広がっている。


「……あれだね。“不思議の国のアリス”かな?」

「「不思議の国のアリス??」」

 僕と梅の不思議そうな声に、あぁ知らないんだねと大樹がざっくりと内容を説明をしてくれた。

「……ふむ。物語の世界、か」

「不思議の国のアリスと言えば、赤と白のバラが有名だね」

「では、赤と白のバラを探してみよう。そこからアオバラに繋がるかもしれない」


 僕たちは庭園を進んでいく。と、にゃーんと猫の鳴き声がした。


「ーーいらっしゃい、アリス」

「……不思議の国のアリスの猫と言えば、チェシャ猫だよね?」

「御名答。いかにもボクはチェシャ猫さ。ボクとの勝負に勝ったら情報をあげる。チャレンジする?」

「……負けた場合はどうなるんだ?」

「特には何もないね〜時間を無駄にするだけかな?」

「闇雲に動き回るよりは良さそうだな」

 乗り気になる僕の顔を大樹が心配そうな顔で見つめている。


「……チェシャ猫はイタズラ好きだからなぁ」


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