第8話 コスモスの咲く空編⑥

「もっと詰めて詰めてーどう?プロテア様?」

「ん。いい感じ」

「……この絵に僕が入ってもいいのか……?花姫たちの絵だろう?」

「いいの、いいの!ルージュはもう仲間なんだから!あ、ルージュ!良かったらボクを抱いててよ!」

 花の姿に戻ったひまわりをルージュが慌てて抱きとめる。

「菖蒲、おいでっ!」

「じゃあ、樹姫と美桜にお願いしようかな?」

「「はーい」」

 大樹の腕は虚しく空をきった。

 じゃあ、せーので花に戻ろっかという桔梗の言葉に花姫全員が返事をした。

 元に戻った花たちはそれはとても綺麗だった。


「……コスモスは混ざらなくてよかったのか?」

「はい。わたくしは絵を描いてるプロテア様を隣でみたかったんです」

「はは。照れるな。……すごいな。いろんな季節が入り乱れてる。奇跡みたいな光景だよ」


 俺は夢中で筆を走らせる。

 思えばここまであっという間だった。

 こうやって絵を描いていると花姫たちとの終わりを思い出せずにはいられない。まだ全員ではないけど、再会出来てよかった。


「……ルージュ。次はアオバラのところに行こうと思う。アオバラを起こして、彼女の願いを叶えつつ、帝国に向かおう。過去に戻り、王様たちを救うんだ」

「……何と礼を言えばいいのかわからないな。“ありがとう”じゃ足りないくらいだ」

「そこは“ありがとう”で充分だよ。……最近ずっと静かだけど、過去に戻る方法はあるんだろ?クローバー」

【ありますね。ワタシがその力を持っています】

「なら、よかった。なぁ、クローバー。ひとつ

 聞いてもいいか?」

【ええ、どうぞ】

「姿を出したりは出来ないのか?」

【……出来ますが、ワタシは……いや、もういいでしょう。彼に出会ってるんですから】

「彼って誰のことだ?」

【……Xです。彼の本当の名前はジョーカーといいます。昔の、ワタシの仲間です】


 手が光り、クローバーが姿を現す。

 緑色のふわふわの髪をした少年だ。


「昔の仲間……?」

【ええ。花姫たちと出会う前、ワタシは彼らの仲間でしたよ】

「……ということは何かがあって、クローバーは仲間じゃなくなったんだな?」

【ええ。今はまだ詮索しないでくれると有り難いのですが】

「いいよ。俺はお前のこと信用してるから」


 にっと俺が笑うとクローバーも笑った。


 ☆


「できたー!」


 空はもうすっかり暗くなっていた。俺の声にみんなが花姫の姿に戻り、絵を覗きにやってきた。みんなが俺の絵を褒めてくれる。


「……プロテア様」


 コスモスが俺の腕を引く。


「おかえりなさい」と言った。とびきりの笑顔で。

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