第7話 キミだけを見つめる〜ひまわり編〜⑤
「ーーあいつが強かったのは、“花姫”の力だったんだな。ずるいじゃないか。僕は恋愛もせず、国のために戦っていたのに」
予想通りのルージュの反応に影はにやりと笑う。
「好きな花姫をひとりやろう。メイドにするなり奴隷にするなり好きにすればいい」
「女性に乱暴はしないよ。そうだな、まっすぐな明るい子がいいかな」
「なら、“ひまわり”はお前にやろう。他の花姫はこちらでもらうぞ」
「あぁ、構わない。僕はハーレムに興味はないからな。ひとりが僕を愛してくれたらいいんだ」
「欲のない男だな」
「そうかな?そばにいてくれる人がいるのは贅沢だと思うけど」
まぁ、プロテアを想っている女の子がすぐに自分になびくとは思わないけど、ゆっくり時間をかければいい。
「花姫に酷い扱いをするなよ?女性なんだからな?」
甘い戯言を鼻で影は笑い飛ばす。
「有用な能力は利用するまでよ」
☆
「え?こんな立派な部屋をボクにくれるの?」
ぽかんとしているひまわりにルージュは苦笑いをしている。
「……お前な、僕が敵だからって誤解してないか?僕はお前と仲良くしたいと思ってるんだぞ?やり方は少々強引ではあったが、僕は花姫の中からお前がいいと選んだんだ。そんな相手をぞんざいに扱いはしないさ」
ひまわりに似合うように黄色を基調としたかわいい部屋にふかふかの大きなベッドがある。
「服は好みがわからなかったから、一通り揃えさせた。あとひとりメイドをつけてある。ひまわり、甘いものは好きか?」
「好きだよ。なんかすごいお姫様扱いだね……?」
「これくらい当たり前だろう。じゃあ、お茶にしようか」
ルージュはそう言うと自ら紅茶を淹れだした。
「そこはメイドさんじゃないんだ?」
「もてなすのは自分でしたいからな」
「……ふふっ、変なの。ボク、利用されるかと思ったのに、なんか違うんだもん」
やっと笑ってくれたなとルージュがひまわりの頬に触れる。ひまわりは今度は手を払わなかった。
もしかしたら。
プロテア様とルージュは話し合えるんじゃないかとひまわりは考え始めていた。
「!この紅茶もお菓子もすごく美味しい!」
「喜んでもらえて良かった。僕のお気に入りなんだよ」
ふわりと笑うルージュに警戒心が揺らぐのをひまわりは感じる。
「さぁ、食べたら出掛けよう。他の花姫のもとに案内してくれるかい?」
「他の花姫に何の用?」
「プロテアに合流されないように先に会いに行く。あいつが力を寄越せと言っていたが、あまりいい気はしないんだ。だから、あいつの手が及ぶ前に花姫たちを連れ出そうと思う。だが特別扱いはお前だけだよ、ひまわり」
ぎゅっとルージュがひまわりを抱き寄せる。大きな胸に抱きしめられて、ひまわりは少しドキリとする。
「……ルージュはなぜプロテア様と戦ってたの……?」
「全てはジーヴルのためだ。プロテアに恨みはない」
「……なぜジーヴルはノールに固執するの?」
「奇跡のアオバラを求めていたんだよ、僕らは」
「アオバラ……花姫に、いるね」
「花姫だったのは知らなかったな」
「どうしてアオバラが必要だったの?」
「王族にかけられた“呪い”を解くためだよ。……僕の心残りはね、王国を守れなかったことなんだよ」
ーールージュ。表立って何もしてやれなくてすまない。
ーー頭をお上げください。孤児の僕に王はよくしてくださっています。このルージュがきっと奇跡のアオバラを手に入れて、お助けいたします……!
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