第7話 キミだけを見つめる〜ひまわり編〜⑥

「……ルージュはなぜ転生したの?」

「……わからない。だから少し旅をしてみたんだけど、王族が滅んだと聞いたよ。僕はアオバラを手に入れられず、王様たちを守れなかったんだ。プロテアはなぜ転生した?」

「ボクたちを残して、死んでしまったから。過去をやり直すためにプロテア様は生まれ変わったんだよ」

「……ねぇ、ひまわり。僕も過去をやり直すことはできるかな……?」

 泣きそうに告げるルージュにひまわりはふわりと笑う。

「ボクたちができるんだから、たぶんルージュにもできるよ」


 イメージが狂う。

 ルージュは敵だった。

 花畑を焼くような奴だった。

 プロテア様と相打ちになった奴だった。

 それなのに。

 ルージュの想いは優しいのだ。


「……ルージュ、なぜあなたは話し合いをしようとしなかったの?プロテア様は話がわかる人なのに」

「……話し合おうとしたよ。だが、国の危機を伝えるわけにはいかなかったから、重要なことは伏せての話になった。そうしたら、アオバラの力は貸せないって返事が来て、強奪になったんだよ」

「言えばよかったのに……」

「外交だから、そうはいかなかったんだよ」


 ポロポロと泣き出すひまわりの頬をルージュが優しく撫でる。


「……ボクがプロテア様に話すよ。話して、ルージュの願いを叶えるよ。王様たちを助けて、ルージュとプロテア様が争わないようにするよ……っ!」

「……ひまわりは優しいな」


 ぎゅっとルージュがひまわりを抱きすくめる。

 かすかにルージュの肩が震えている。


「……僕のために泣いてくれて、動いてくれると言ってくれて、嬉しくてたまらないよ。願いが叶うなら、君たちの大切な主、プロテアを傷つけないと約束するよ。僕が憎いなら僕の首を差し出してもいい。王様たちを守れるなら僕は死んでもいいんだよ」


 ビタンとひまわりがルージュの頬を叩く。


「死んでもいいって言っちゃダメだよ。ルージュはルージュで幸せにならなきゃ!」


 ルージュはぽかんとし、顔をくしゃりと歪ませて笑う。


「……もう、君には敵わないな。……じゃあさ、全部うまくいったらさ、僕の奥さんになってよ?オッケーをもらえるまで、何度も口説くからね」

「……っ!」


 ひまわりは真っ赤になる。


「……本気だから、ちゃんと考えておいてね」


 ☆


 次に重要になる花姫、コスモスのもとにルージュとひまわりが出向くとプロテアたちが待っていた。


「ーールージュっ!ひまわりを返せっ!」


 プロテアの怒りが炸裂し、ルージュに向けて攻撃が放たれる。


「ルージュ、ボクに任せて?」

「あぁ、頼む」


 ひまわりがプロテアの攻撃を受け止める。

 キミだけを見つめてた。

 まっすぐに見つめてた。

 でも、視線をよそに向けると違うものが見えてきた。

 驚いてるね、みんな。

 そりゃそうだよね。

 ボクだってルージュは“敵”で“悪”だと思ってた。


「プロテア様!急にいなくなって、心配かけてごめんなさい!ボクの話を聞いてほしいんだ!ルージュはね、悪い奴じゃないんだよ!ルージュはーー」


「……目障りな花姫だな」


 攻撃がひまわりに向けて放たれる。


「ひまわりっ!」

「え……?」


 ルージュがひまわりを庇い、倒れる。


「……情けない。ルージュめ、ひまわりに骨抜きにされたか」






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