第7話 キミだけを見つける〜ひまわり編〜④

「ーー思ったより時間がかかったな。来ないかと思ったよ」

「みんなで花火をしてたんだよ。夏の夜といえば花火でしょ?」

「思い出が出来たようだな」

「……できたよ。その余韻に浸りたいから、ボクに触らないで」


 手を伸ばしてきたルージュをひまわりは拒絶する。


「ーー仲間にはなったけど、心まで許したわけじゃないから。ボクの心はプロテア様にあるんだから」

「僕を好きになったらいいのに。君だけを愛してあげるよ?」

「そんなの要らないよ。どうせボクの能力だけが目当てなのに、口説かないで」

「おや、嫌われたものだね。君が1番タイプだってのは本当なんだけどな。裏表のない明るいタイプっていいじゃない?」

「利用しやすいの間違いでしょ?」


 強気なひまわりにルージュはそっとキスをする。

 ひまわりの平手をルージュが受け止める。


「うん。やっぱり君はかわいいね。行こうか、ひまわり」


 ひどく優しく微笑んで、ルージュとひまわりは絵から抜け出した。


 ☆


「ーー……て、プロテア様。起きて、プロテア様……!」


 身体を揺すられて俺は飛び起きる。目の前には桔梗が深刻そうな顔でいる。周りは酷く暗い。


「どうした?桔梗」

「大変なの!絵からひまわりがいなくなっちゃったの!」

「え?ひまわりが?」

「……絵の主がいなくなると花は枯れるんだな」

 クレマチスが枯れてしまったひまわりに触れ、悲しそうに呟いた。

「何が起こってるんだ?」

「ひまわりがいなくなったとさっき桔梗が言った」

「どうしてだ!?あんなに楽しそうに笑ってたじゃないか!?」

「……推測でしかないが、妨害だろう。プロテア様に花姫を集められたら困る奴がいるんだよ」

「ルージュ、かな?」

「ルージュかもしれないし、Xかもしれないな」

「クレマチス。ルージュは違うんじゃない?ルージュには花姫は見えないのよ?」

 グラジオラスの指摘にみんながクレマチスを見やる。

「組んだという可能性はないか?ルージュとXが」

「それは……否定出来ないね」

「ルージュが花姫を見えるようになったら脅威だよ」


 クレマチスの言葉に皆がシンとする。


「……ひまわりが誘拐された可能性はないかな?」

「ないとは言い切れないが、ひとつ問題があるんだよ」

「問題って?」

「梅が隠れていた件でわかるように、花姫は自力では絵から出られないんだよ」

 そこであることが頭に引っかかる。ちょっと待て。

 俺はひまわりに絵の中にやってきたはずだ。あ、と俺の口から声が溢れる。

「気づいたみたいだね、プロテア様。私も気になってたんだ。だから、ひまわりを煽って好きにさせていたんだが、“思い出作り”だったんだな。あの時間は」


 ひまわりの涙を思い出す。

 最後だと思ってひまわりは泣いていたのか。

 ひとりで戦っていたのか。気づいてあげられなくてごめん。


「すまない、プロテア様。私の失態だ」

「クレマチスは悪くないよ。涙の理由を見抜けなかった俺の失態だ」


 くしゃりとクレマチスの頭を撫で、俺は言う。


「ーーひまわりを迎えに行くぞ」


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