第7話 キミだけを見つめる〜ひまわり編〜③

 ーー目を開けろ、ひまわり。


 誰かがボクを呼んでいる。

 誰?プロテア様?

 ボクを迎えにきてくれたの?


 のろのろと目を開けて、声の主を見る。

 そこにいたのはーー。


「……なんでルージュがここにいるの?」


 ☆


「ふむ。なかなか考えたな、プロテア様」

「プロテア様似合う〜。カッコイイ!」


 いろいろ悩んで俺はサングラスをかけることにした。

 これで刺激はマイルドになった気がするし、視線も隠せるし、一石二鳥だ。


「プロテア様、遊ぼ」

「今は何をしてるの?」

「スイカ割りだよ」

「お、いいね!」

「わたしはうまく割れないんだけど、樹姫と美桜がすごいんだよ。見えてるみたいに当てちゃうの」

 満足そうに姪っ子たちが笑っている。

「よし!じゃあ、おじさんが頑張っちゃおうかな!」

 グラジオラスがサングラスを取り、目隠しをしてくれる。回れ回れ!とクレマチスの煽る声がする。

 ぐるぐると回され、ふらふらしながらスイカを目指す。

 右!左!といろいろな声がするのだが、目が回っていてわからない。ええいと振り下ろした棒はスイカから外れていた。

 しっぱいーと姪っ子たちが笑っている。

 スイカ割り、なかなか難しい!


「まだスイカ割りやりたい人いる?」

「我がしてみてもいいだろうか?」

「お、梅か!梅なら出来そうだな」

「見事に切ってみせようぞ」

「じゃあ、ハンデにたくさん回そうか」


 楽しそうな声が響いている。梅を見守っているとひまわりが俺の横に座り、身体を預けてくる。あれ?なんか元気がない?


「ひまわり、どうした?疲れちゃったか?」

「……楽しいなぁって。ずっとこんな時間が続けばいいなぁって思ったんだ」

「ずっと続くよ。俺はみんなと幸せになるって決めたから。あんな悲しい終わり方はさせないんだ。もちろんみんなの中にひまわりも含まれてるよ」

 深刻そうな顔をしているひまわりの頬に触れるとポロポロとひまわりが涙を流す。

「ひまわり……?」

「な、なんでもないよ?お別れのときを思い出して悲しくなっちゃっただけ!」

 涙を拭い、無理矢理にひまわりが笑う。胸騒ぎがするが、ひまわりが追求を許してくれない。


「あら、ひまわり。どうかした?」

「なんでもないよ、桔梗」

「プロテア様に泣かされたのなら怒ってあげるから言ってね?」

「ひどいな、桔梗。俺は無実だよ」

「そうそう〜プロテア様は何も悪くないよ!」

「ならよかった。スイカ、梅がきれいに切ってくれたからみんなで食べましょ?」

「いくいく!」

 ひまわりが走り去っていこうとする。その腕を俺は咄嗟に掴む。逃しては行けない気がして。

「プロテア様?」

「あ、あぁ。ごめん。一緒に行こう」

「うんっ!」


 後に追求しなかったことを悔やむようになるとはこのとき俺が知る由はない。



「ーーひまわりはね、おひさまがないと咲けないんだよ、プロテア様」




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