第7話 キミだけを見つめる〜ひまわり編〜②

「いいか、クロユリ、ヒガンバナ。胸はたわわかたわわじゃないかはさして重要ではないんだよ。大事なのは“感度”だ!」

「「か、感度ってどういうこと……?」」

 ごくりと息を飲むふたりにクレマチスはにっと笑う。

「プロテア様に触られて、無反応というわけにはいくまい?」

「「プロテア様に触られる……!?」」

 クロユリは顔を真っ赤にし、ヒガンバナはボタボタと鼻血を流している。

 おいおい、クレマチス。お前は一体何を吹き込んでるんだ?

「ク、クレマチスは自信があるの……?」

「もちろんだとも!私はーー」

「いい加減にしろ、クレマチス」

 べしっと俺はクレマチスの頭を叩く。

「純粋な子たちに変なことを吹き込むんじゃありません!」

「痛いなー、プロテア様。クロユリが好きならいつかは登る階段でしょうが」

「そういう問題じゃなーい!」

「あ、怒った。助けて、桔梗!」

「いやいや、自業自得でしょうよ」

「みんな騒ぎすぎよ。たかが水着じゃない。そりゃヒガンバナとか梅は着物だから慣れないかもしれないけど、水着はれっきとしたファッションよ?プロテア様も動揺しすぎだってば」

 グラジオラスに笑われてしまうが、正直見逃して欲しい。キスまでしか経験のない男の子にはやはり水着は刺激が強いのだ。

 ドギマギしながらみんなの方をみる。こういうとき視線はどこに向けたらいいんだろう。

「おっと、プロテア様は胸ではなくてお尻派だったのかな?」

「クーレーマーチースー!!」

 揶揄われている。

 間違いなく揶揄われている。

 抗議のために腕を掴んだらぐいと腕を引かれ、俺はクレマチスを押し倒すような体勢になる。

「いっぱい触ってい・い・よ・♡」

 あ、もう無理。限界だ。

 溢れ出した鼻血を両手で押さえながら俺は退散する。


「……触って欲しいのは本心だったんだけど、初心だなぁ、プロテア様は。まぁ、そういうとこがいいんだけどね」


 ☆


「プロテア様、大丈夫?暑さにやられちゃって鼻血が出ちゃったのかなぁ??」

 頭が何か柔らかいものの上に置かれている。

 視線をあげると、そこには心配そうなひまわりの顔があった。今回の諸悪の根源である彼女だが、本人に悪気は一切ないので何も言えない。

「ひまわり、できたぞ」

「ありがと、梅!」

「ん?何ができたんだ?」

「かき氷だよ!身体が冷えたら鼻血も止まるかなって!」

「あはは。ありがとう、ひまわり、梅」

 鼻血は別の理由なのだが、言わないでおこう。

「みてみて!レインボーかき氷!きれいでしょ!」

「お、うまそう!一緒に食べようか!」

 うんうんと頷くひまわりと遠慮がちな梅と一緒にかき氷をつつく。

「かき氷は宇治金時のイメージだったが、これはこれで美味しいものだな」

「夏はやっぱりかき氷だよね!」

「ふふ。ひまわり、浴衣もいいぞ。浴衣を着て夏祭りも楽しいものだ」

「いいね!みんなで行きたいね!」

 平和なふたりとの会話を楽しむが、やっぱり水着姿を直視出来ない。


「あ、プロテア様。このポーズはどうだろうか?」

「え?あ?へ??」


 梅の豊満な胸の谷間が腕で寄せられ強調されている。


「クレマチスが言ってたんだ。プロテア様が喜ぶと。だから……って、鼻血が出ているぞ?」


 あぁ、俺は鼻血の出し過ぎで死ぬかもしれない。






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