第6話 百花の魁・梅編③
「皆で我を探してくれていたんだな。申し訳ないことをした」
「頭を上げて、梅。みんな気にしてないわ。仲間だもの」
「梅、また一緒に戦おう。私にその鉄壁の防御力を任せてくれ」
「あぁ。クレマチスなら安心して、能力を預けられる」
刀を大事そうに梅は抱えている。
「……ひとつお願いがあるのだが」
「ん?どうしたの、梅。あなたがお願いだなんて珍しい」
「手合わせがしたいんだ。腕が鈍っていないか、確認をしたい」
「梅と戦えるのはヒガンバナくらいね。ヒガンバナ、どうする?」
「……ヒガンバナが頑張ったら、プロテア様は褒めてくれる?」
上目遣いのヒガンバナに俺はもちろんと頬を撫でる。
「ふふ。じゃあ、やる。本気出していいんだよね、梅?」
「あぁ、勿論だ」
「じゃあ、今はもう暗いから明日起きたらにしよう?ヒガンバナはもう眠いんだよ」
「了解した。感謝する、ヒガンバナ」
そろそろと花姫たちは眠りにつく。
梅がそっと隣に横たわり、手を繋いできた。
「……プロテア様、お会いしたかった」
「俺もだよ、梅」
「会ったらもっと苦しいかと思ったが、嬉しさが勝ったな。我はプロテア様のことを愛しているようだ」
「……嬉しそうだね、梅」
「そうだな。我が好きになったふたり目の人間だからな」
「ひとり目はその刀をくれた人だっけ?」
「……あぁ。そんな他愛もない話、覚えてくれていたのだな」
「梅の大事な記憶だろう?また寝物語にでも話を聞かせてくれないか?」
「……我の話でいいのなら喜んで。そうだね、あの人と出会ったのは雪の降る寒い夜だったよ」
草木も眠る丑三つ時、我は熱を感じ目を覚ました。
なんだろうと思い、見やるとそれはおびただしい量の血だった。
争い、か。少しうんざりする。
人間は殺し合いが好きなのか、よく互いを傷つけあっている。
ここで死なれるのは少し目覚めが悪いなと思い、血の持ち主を見やる。ふむ。片腕がない。思ったより重症のようだ。
そっと顔を出してみると男と目があった。
我を男の目は捉えていた。
花の化身である我を子どもはともかく大人の男が見れるというのは稀だった。
綺麗な方だと残った手を伸ばしながら、男は笑う。
目があってしまった以上、見殺しにするわけにもいかないなと我はため息をつきながら意識を失った男の手を取った。
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