第18話 プレデターとの再戦、そして、再び、時空が歪む

京太郎は今日子に言った。


「風魔小太郎を霊視してみて欲しい」


「分かったわ、でも、その前に試してみたいことがあるの」


「なに?」


「それはね、魂だけの存在でも手首合体の効果が出るかどうかってこと」


「ああ、なるほど、それは確かに、ありますね」


二人は恭美を呼び出した。

恭美はおかんむりだった。


「二人して何処へ行ってたのよ。私はつんぼさじきなの?」


京太郎は苦笑した。


(たった、30分ばかりじゃないか。そっか、魂だけになっているからな。マジの話し相手が僕たちだけだからな。そう思ってしまうか)


「それより、今日子さんからの提案だけどね、魂だけの状態で手首を合体したことないでしょう。一回、試してみたいって。それにね、プレデターを見つけられるかもしれないんだ。まだ、海のものとも山のものとも分からない状態だけどね」


「そうよね、プレデターと戦うとなれば、パワーアップをしておかないと下手すれば魂ごと消滅させられるかもしれないですものね」


三人はさっそく合体してみることにした。


「うーん、なんかドキドキする」と言いながら今日子が手首を見ていると、見よ、魂だけなのに手首に目のマークが浮き出て来た。


(凄いわ、三人が集まって手首の話をしたからなのかしら?)


三人はいつものように、手首を重ね合わせてみた。


すると魂が震えた。


そして、なぜか、三人の魂の中を光のようなものが走り抜けた。


(なに、これ?)

三人は思わず目を合わせた。


「なんでしょうかこれは? パワーアップされた実感がないのですが、でも、気持ちが清浄になった気がする」


「浄化されたのかしら?」と恭美が京太郎に同感した。


今日子は二人ほど浮かれた気分にはなれなかった。


(なにか嬉しいような気持が悪いような気がする。もしかしたら、元に戻れないかもしれないわ。こういう超常現象は怖いから起きないで欲しいわ。私は、まだ、20歳なのよ。青春時代真っ盛りなのよ。もうこれ以上、奇妙なことは起こって欲しくないわ。早くプレデターを倒して元の世界に戻りたい)


そのとき、第三の眼が開いた。


(えっ、魂なのに第三の目なんてあるの? うわっ、超はっきり見える。これって、パワーアップしたから、それとも肉体という邪魔なものを持っていないから?)


今日子が叫んだ。


「見つけた! プレデターがいた! やたらかぶいている格好をしているわ。しかも、忍刀を背負っている。これは忍者? 忍者なのかしら」


「顔に化粧を施していますか? 忍者らしからぬ派手な衣装をまとっていますか?」


「化粧をしているわ。しかも、きらびやかな衣装を身にまとっている」


「そいつは、間違いなく風魔小太郎ですね。そんな変な奴は風魔小太郎しかいない。で、何処にいるか分かりますか?」


「ここは名張の赤目の滝ね。ここから40キロメートルの距離よ」


「ふむ、では小走りでも1時間半ほどはかかりますね」


恭美が言った。

「とりあえず、行きましょう」


丈太郎と蛍火と陽炎は走り出した。


なぜか、三人は(赤目の滝に向かって走らねば)と思い込まされていた。


40キロの距離と言えばフルマラソンの距離だ。


三人は、時々、餅米、うるち米、蓮の実、長芋、桂心、高麗人参、氷砂糖などで作られた兵糧丸ひょうろうがんを口にしながら走っている。


兵糧丸は5〜7粒で疲労回復に効果が出る。


これさえ食べていれば40キロの距離など問題ではない。


京太郎、今日子、恭美の三人は、ただ乗っかているから楽だ? そんなことはない、魂には筋肉もなければ、内臓もないから走っても疲れないし、むしろ、速く走れるから乗っかっているより、自分で走った方が楽だ。


約一時間半かけて三人と三人は赤目口に着いた。


(さて、何処にいるのかしら)と考えるのは不要だった。


風魔小太郎はすぐに見つかった。


ド派手なメイクと衣装だから、すぐに見つけられる。


五人ほどの乱波を従えていた。

まず、この下忍五人を倒さないと面倒だ。


「行くぞ!」

三人は丈太郎、蛍火、陽炎の三人に命じた。


同時に、京太郎と恭美が相手の魂を過度に損傷させないように軽いエネルギーを照射した。


風魔小太郎は突然の乱入に驚いたが、それ以上に驚いたのはプレデターだった。


(なぜ、あの三人がここにいるのだ。奴らも同じ時空に飛ばされて来たというのか!)


プレデターは思わず胸を押さえた。

奴らに射抜かれた痛みの感覚が残っている。


一方、肉体の自由を奪われた五人の下忍はたやすく打倒された。


それを見た風魔小太郎は慌てて逃げ出した。


元々、戦うためにここに来たのではない。

主たる任務は諜報活動だ。


敵に見つかった以上、三十六計逃げるにしかずだ。

それにしても、伊賀の忍者がこれほど強いとは。


風魔小太郎は舌を巻いて逃げて行った。


そして、プレデターだけが取り残された。


(ようやく出会えたわね)


京太郎と恭美が前に出て、今日子は熱射線の巻き添えを食わないように、五歩ほど退いた。


プレデターが両手を上げた。


京太郎も両手首を上げ、恭美は四本の指をそろえた。


二本の腕と二本の手首と四本の指から同時に霊力が照射された。


京太郎は被弾したが以前に受けたときよりもダメージが軽かった。


(これはエネルギーに光が入ったおかげか、それともプレデターの熱射線の威力が落ちたのか)


恭美は初めて被弾したがこちらも何とか持ちこたえた。


しかし、痛かった。

恭美が怒った。


うおーと叫んで四本の指からエネルギーを二連続で照射した。


(ほ? 連続で照射できた。パワーがアップしたのかしら)


プレデターは二発のエネルギーを受けてよろめいていた。


そこにズーン!と京太郎の光入りのエネルギーが飛んできた。


「グググググ」


今日子が叫んだ。


「今よ、プレデターの色が薄くなってきたわ、苦しそうに顔が歪んでいるわ」


実際、プレデターはできるならば逃げ出したかったが、ここでは逃げ場がない。


そこに、ズーン! シャー! と京太郎と恭美のエネルギーが撃ち込まれた。


「グルグルグル」

プレデターが目に見えて弱り始めた。


今日子がエールを送る。

「とどめを刺して!」


その声を聞いて、京太郎と恭美はあらん限りのエネルギーを照射した。


プレデターの体が分解されそうだ。

体が四散五裂しかかっている。


霞のような煙が湧き始めている。


そして、ついに、「うぎゃぁぁぁぁぁ」と断末魔の大絶叫をあげて、霊体が破裂し、靄のようになって消え去った。


「終わったわね!」


今日子が歓喜の声をあげたとき、急に時空が歪み始めた。


「またか!」

思わず、京太郎が叫んだ。


やはり、エネルギーを放出しすぎると時空に変化が起きるようだ。


時空が歪み、亀裂が入りだし、その亀裂が広まると共に中が渦巻き始めた。


「いまだ!行くぞ!」

三人は手をつないで、その渦の中に飛び込んだ。終わり。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「忍者と魔物が織りなす異空間バトル、といってもこれはホラー。不気味さ満載の時空が割れるホラーなんですよ~」 @aaapun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る