第1話 自己紹介

◯◯視点


新浜先生の自己紹介が終わったところで、次はお決まりの自己紹介。先生の指定で右端の1番前の席の人からやることになった、僕の席はとういと…


~~~~~~~~~~~|教壇|~~~~~~~~~~~~

||== == == ==|ドア

||== == == ==|

||== == == ==|

窓|== == == ==|

||== == == ==|

||席= == == ==|


こうだ。

つまり1番最後。

まぁ、最後だからって何か特別な事を言うということはないだろうが、何故か少し責任感を感じる。


僕の心配を他所に自己紹介が始まった。最初の子が名前と趣味と一言、という無難な挨拶をしてくれたため、後も習って同じような挨拶をしている。


その中でも目立った挨拶をしたのは、朝から元気な声で話していた女子グループの中心にいた椎名紗良しいなさらだ。一際目立つ見た目で、他とは少し違う挨拶をしていた。容姿は文句のないレベルで可愛い、そしてとても元気そうな子だ、今後のクラスカーストのトップに君臨するだろう。なんならもうトップだと思う。そのような印象だった。


別にそういうタイプが嫌いとかそういう訳ではない、まぁノリというか、波長が合わないのは認める。


椎名さんが自己紹介を終え、周りの取り巻き達が他の人たちより大きな拍手をする。そして自己紹介が続き自分の番が近づいてきた。次は隣の席の子の番だ。


「名前は一ノいちのせ空歩そらんです。趣味は漫画を読むことです。1年間よろしくお願いします。」


他の人よりも少し小さい声で自己紹介をし、周りからの軽い拍手で次の人を迎えた。そして、次の人、次の人、と自分の番が近づき、ついに出番となった。少し緊張していたが、落ち着き口を開いた。


「名前は、如月壱月きさらぎいつきです。趣味はゲームとかインドア系が好きです。1年間よろしくお願いします。」


と、テンプレのような挨拶をした。

周りからは義務的な感じで拍手が起きた。


自己紹介後、先生からの指示で近くの席でグループを作りもう一度自己紹介をした後、グループみんなで写真を撮って提出するらしい。私立の学校だけあって、電子タブレットを入学前に買わされた、それで写真を撮って提出するらしい。写真は教室の後ろに飾られるらしいので、あまり目立ちたくはない。


余談だがスマホは使用OKという少し緩い学校だ。


そして、先生が分けたグループで机をくっ付けグループワークを始める。うちのクラスは40人程のクラスで、僕の班は6人のグループになった。一番最初に話はじめたのは僕の前の席の男子だった。今は机をくっ付けてているので隣の席だ。


「さっきの自己紹介でもいったけど、名前は中野晴翔なかのはると、趣味はスポーツ全般!漫画やアニメも好きだし、スマホゲームとかもやるぞ」


これが陽キャというんだろうなと思っていると、「次、お前な」と話をふられたので名前だけは言っておいた。一通りグループの自己紹介を終えると隣の奴が話かけてきた。


「なぁ、壱月このクラスで誰が可愛いと思う?俺はやっぱり椎名さんかな。でも人気そうだからすぐ彼氏とかできそうだよな笑」と耳打ちしてきた。


しかし声がデカ過ぎてグループのみんなには聞こえていると思う。なんのための耳打ちだよと思いながら中野の質問に対しては適当に流した。それより中野が急に呼び捨てで呼んでくるもんだからびっくりした。


距離の詰めかたおかしいだろ。


でもこのグループに中野みたいな人間がいてくれて助かった。写真も率先して撮ってくれて何事も無くグループワークが終わった。まだおわってないグループもあったみたいだが、予定していたHRの時間よりも長くなってしまっていたのか、先生が慌てて中断していた。


すぐに先生の号令で授業が終わった。


今日はこれで帰宅らしい。一応進学校ではあるため、明日からは普通に授業がある。


解散と言われてからすぐにクラスみんながRINEを交換しあってた、クラスグループでも作るのだろうと、横目で見ながら教室から退出する。一応中野とはRINEを交換していたのであいつならグループに入れてくれるだろうと信じて帰ることにした。


高校生になったので寄り道ができるようになったので本屋に寄ることにした。カフェとかに行ってみたいと思わないわけではないが、1人で行く勇気がないだけだ。まぁ放課後カフェに行くことなんて今後ないと思う。


本屋に寄って気になっていた本を手に取り、会計を済ませるとそのまま帰路に着いた。ふと、スマホを見ると勝手クラスグループに入っていた。


グッジョブ中野


−次の日−


一学期初めの授業は中学範囲の確認テストだった。中学の頃は困らない程に勉強はしていたので、ある程度は解けたと思う。午前中にテストが終わってしまったのでもう帰宅らしい。


「なぁ、壱月テストどうだった?」


前の奴が後ろを向いて話しかけてきた、席はしばらく昨日のままらしい。


「まぁまぁかな」


「そうやって言ってー、どうせ高いんだろ?」


「そういうお前はどうなんだよ」


「俺?うーん、まぁ100点ぐらいかな」


「見かけによらず、すげーな、お前」


「まー、3教科でだけどな」


「なんだよびっくりさせんなよ」


「てか、名前で呼んでくれよ」


「わかったよ晴翔」


他愛のない会話をしながら荷物をバッグに詰めていく。まだ12時を少し回ったぐらいなのに、頭を使ったせいかお腹が空いていた。早くご飯を食べたかったのでHRが終わり次第すぐに教室から出た。校門を通り過ぎたぐらいで、昨日買った本を机の中に忘れたことに気づいた。少し面倒くさかったが、後で読もうと思っていたので取りに戻ることにした。僕のクラスは3階の端にあるので戻るのはちょっと大変だ。


クラスに戻るとほとんどみんないなくなっていた。陽キャグループが残っていると思ったがどこかに遊びに行ったのか、いなかった。


ただ、1人まだ教室に残っている人がいた、名前は確か、一ノいちのせ空歩そらんだったっけな、気にせず本だけ取って教室を出ようとしたら、椅子を引く音が聞こえた。ふと振り返ると、そこには一ノ瀬さんが立っていた。


「あ、あの、…連絡先交換してくれませんか?」

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