18品 給食着
「フェリーチェ……参る!」
フェリーチェが小学校在籍中のクラスまで薄青色の給食着を着て自慢しにやって来た。
「ミーティア先生って器用だわ」
とボナペティートたちは褒めて、
「ただの給食着じゃねえか」
と男子たちはどうでも良さそうにする。
「これは普通の給食着ではないぞ。大魔法使いが遊びを施した魔法の給食着だ!」
今日もクラスメイトの心を掴んでやまないフェリーチェであった。藁人形の呪いによって人気が落ち続けているプリエラは、誕生日が近い、と友人と話をしていた。しかし、フェリーチェの登場により友人に「しぃ」と静かにするようにジェスチャーされた。
この給食着は花祭り専用にカスタマイズされている。まずは、花祭りの料理のレシピが映像のように給食着に霧状に覆っている。その霧を吸い込んだ者は頭にぼんやりとレシピが思い浮かび、キッチンに立つと鮮明になるらしい。
「これで花祭りの夜の晩餐会の準備に参加できるぞぅ」
フェリーチェはウッキウキにシャカリキダンスをした。
「周りの人にも影響しますか?」
何故か丁寧語になるクラスメイトは問う。
「霧の範囲が狭いから難しいかも」
と作成者でないため、着た者の感覚でしか分からない答えが返ってきた。
次に、給食着がピカピカ光る。
「光る機能を入れるのはテンプレといいますか……」
ボナペティートの彼氏が秀才メガネを押さえて指摘する。
「世界中のどこを探したら、闇魔法使いが編んだ光る布が見つかると思うか!」
とフェリーチェは、偉大なるミーティア先生が苦手な光を搭載してくれた努力を説けば、
「確かに……」とクラスメイトはこの光の尊さを有難がった。秀才メガネもテンプレと吐き捨てた己を恥じた。
最後の搭載は、「花祭りの晩餐会のあとの楽しみ」だそうだ。フェリーチェも知らないという。ある事件にインスパイアされて追加した機能だとは聞いている。夜だからミーティア先生の領分だし、特大の仕掛けがあるのだろう。
ボナペティートが秀才メガネくんとの晩餐会デートの後に、フェリーチェと夜中のパーティーをしたい、とちょっと顔を赤らめて誘った。
「給食着の仕掛けを知りたいのかぁ……」
とフェリーチェがにやければ、
「給食着も気になるけど、おめでたい日に遊びたいの!」
ボナペティートがわかっているくせに!、と鼻息荒くした。フェリーチェは謝りながら了解した。他のクラスメイトも次々と参加を名乗り出た。
フェリーチェはミーティア先生とおまじない屋に帰ってきた。そして、エメちゃんとエミコちゃんに、晩餐会の後に小学校のクラスメイトとパーティーをするから、30人が入れる多目的室の予約をするように頼んだ。
「今の時期は難しいだろうから僕の土地を貸すね!」
ミーティア先生曰く、この前フェリーチェと天体観測した空き地は自分の土地だから自由に使っていいらしい。それからフェリーチェは二人に、
「その日は誕生日の者がいるから、ケーキを用意して欲しい」
とお願いした。
「それなら特大のスポンジだけ用意して、皆で食べ物を持ち寄ってデコレーションしたらどうかな?」とエメちゃんが提案したら、フェリーチェも、そして明日のクラスでも賛同を貰って盛り上がった。その晩は皆で給食着を着て、写真撮影会を開こうとコスプレ気分でいい気分になった。プリエラは自分の誕生日を潰されたという怒りで、割り箸を折ろうとしたが折れなかったのが幸いである。
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