14品 一体誰なんだ…?
フェリーチェは中学校舎の裏庭にて、誰かが戯れに植えたアベリアのこんもりした草を枕に寝転がっていた。そこにクラスメイトのエミリーが同胞を三人携えて声をかけてきた。
「なーなー、フェリーチェっていうよくわからん女ーいいかー?」
「なんだ大神族か」
フェリーチェは目を開けて起き上がった。
「あのなーフェリーチェの寝転がってる所、誰かがうんこしてたぞー」
それを聞いたフェリーチェはふっと笑って立ち上がった。彼女は今朝から「今日はやばい日レーダー」が発動していた。一体どういう傾向でやばいのか、精度が悪いからわからなかった。ただ、「茶色に注意」とぼんやり浮かんでいた。だから、今日は制服を着るのはやめて、中学の方のジャージで一日を過ごしていた。
「あれ、フェリーチェさん。服がうんこまみれですわ」
と一見清楚そうなフラウが指摘すれば、
「ちがう、小学校で泥合戦をしたんだ」
フェリーチェは釈明し、
「しかし、一体誰がこんな所でうんこしたんだ」
お風呂に入りたくてたまらなかった。
「大神族の嗅覚なら犯人を見つけられるんじゃないのか」
と目線をやる。
「だーれーがーうんこの匂いを嗅ぎ取って、色んなやつの尻を嗅ぎ回らないといけないのよっ!」
と小さな縦耳をピクピクさせたミヨコが、キャンキャン怒る。フェリーチェはミヨコの顎を撫でたら、服従できるチョロさを彼女から感じた。
「クイズ考えた」
とクールでスレンダーなブリジストが、フェリーチェにノートの紙を一枚渡した。
『この四人の中で誰がうんこをしたでしょう?』
フェリーチェが代表して読めば、
「は?は??は????」
ミヨコは血管がちぎれたんじゃないかってくらい顔を赤くして恥ずかしがっていた。
ブリジストが今回のうんこを調べたところ、満月の日の真夜中に行われたと判明した。そして、大神族の毛繕いで飲み込んじゃった若毛が混じっていて、性別としてメスのうんこ、年齢的にここにいる四人となった。
フェリーチェはふむと腕を組んで、
「満月といえば三日前か……昨日は雨も降ったし土に還っているか。そこは安心だな」
と心の余裕を取り戻して、高みの見物でクイズの司会者兼回答者になってあげた。
「三日前の夜、何をしていた?」
ミヨコは必死に挙手して、
「寝つきが悪くて猛格闘していた!本当本当!」
とお腹を押さえる姿は見ていられない。
「ボロボロアーケードでエロ本読んでました」
とフラウはスッキリした微笑んでいる。
「三日前の夕ご飯が思い出せないなー……」
とエミリーはフェリーチェの周りをぐるぐる回った。
「いつもは秘密だけど。髪を切りに行った」
とブリジストは答える。ショートカットが決まっているぅ。
「なぜ犯人は学校を選ばせずにはいられなかったのか?」
「学校が大好きでマーキングしたかったに決まってるなー!」
とエミリーは目を輝かせた。
「学校でいたすことに何かしらの興奮があったんですわ」
とフラウは変質者扱いをする。
「あたしにクイズを作らせたかったんだと思う」
とブリジストは他人行儀だ。残りのミヨコは、
「ここには腸を引きずらせようとする妖怪がいて、そいつと格闘していたら思わず出ちゃったんでしょう!ここでうんこした人は戦士だったの!」
とやけに想像力を働かせた。
「一体誰が犯人だと思う?」
エミリーとフラウはミヨコを指名した。
「ちがうちがうちがーーーう!ブリジストでしょ!?第一発見者!こんな隅っこで何してたのよ!」
ブリジストは悲しそうに顔を歪め、
「ここで日向ぼっこしようと寝転がったら……さっぱり切ったばかりの髪が──」
ああ、これ以上の悲惨は聞けないよ。
フェリーチェはブリジストと握手しその場を去った。フェリーチェにはこの四人が不審者めいたことをするとは思えなかった。
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