3品 留年ばかりしている留学生

 愛待ち街では留年することはそこまでおかしくない。誰だって青春を謳歌し続けたいだろうし、オトナになりたいやつだけなればいい。しかし、留年するとしても限度がある。二三回くらいが普通の許容範囲だ。優等生は言わずもがな、不良にだってメンツって言うものがある。しかし、メンツなんて気にしないロックな女子学生がいる。かれこれ十三年は中学三年生の日々を送っている、トワイライトの留学生ハルジオンだ。


 ハルジオンは薔薇色の髪に、黒くて禍々しい角をしている。彼女は角の手入れに抜かりなく、角の先はヤスリで丸くしている。人とぶつかったら危ない、という真心がこもっている。ただ、真心の他にも訳がある。夏を迎えると、ハルジオンは角に痒みを感じ、付き人に切り落とさせることでスッキリさせるのだ。しかし、必ず角の先が四角くなってしまい、ハルジオンはそれが不格好に感じて堪らないのだ。ちなみに、角に痛覚や触覚はない。

「ぶらーぶら」

 フェリーチェはハルジオンの角を掴んで懸垂をした。

「王、戯れを」

 ハルジオンは微笑ましそうに、彼女の両脇に手を回して支えてあげた。

「こらこらフェリーチェ!シオンちゃんだから怒らないのであって、魔族は角に並々ならないこだわりがあるからナイーブになりやすいの!それにね、角と角の間に電流が流れているから危ない、危ない!」

 ミーティア先生はフェリーチェの腰に手を回して、ハルジオンから引き剥がした。

 付き人のシャルロット曰く、寮の消灯時間が過ぎても、ハルジオンの角と角の間でルミネセンスという現象が起こり、電気の代わりとなる。気になる漫画を読み続けられるから楽チンだ。二人はクイーンサイズのベッドで同衾し、漫画を一緒に読んで語り合うそうだ。フェリーチェは角の機能にそこまで興味がなく、寮生活が気になって仕方なかった。


「今日はね、王にお伝えしたいことがありまして、おまじない屋まで顔を出しに参りました……留年女王として」

 彼女は同じトワイライト人であるフェリーチェを励ましに来た。トワイライト人は留年を恥じることなく、マナフィリアを隅々まで謳歌すべきだ、と持論をかます。まずは学生生活そのものをどっぷり楽しむことが秘訣で、その生活にちょっと飽きたら、

「どうせ来年も同じことを学ぶのだから」

 と旅に出るといい。旅はさまざまで、なんか化粧してショッピングすればいいや、の精神だけではダメだ。好きな本を読み、趣味に没頭することも好奇心や探究心の旅になる、と彼女は熱く語っていた。

 それを受けた後輩のフェリーチェは、

「学生生活ではしばらく飽きないだろう。飽きた時に遊んでおくれ」

 ろ先輩のハルジオンに返す。

 それからフェリーチェは、小学生と中学生の二重生活をしていることを明かした。

「まあ……!ロックだわ!」

 ハルジオンはそれを知り、大いに感銘を受けた。

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