第10話 地獄
今日地獄に堕ちてきたのは43人。
これが牛頭鬼の最後の仕事となった。
牛頭鬼は今までの働きが認められて今世に生まれ変わる事ができるのだ。
地獄で100年働いた牛頭鬼だったが、今世とは時間の流れが違うので2週間ほどしかたっていなかった。
生まれ変わった牛頭鬼は山下吾郎という名前で生を受けた。
吾郎ではあるが5人目と言う訳ではなく、一人っ子だった。
決して裕福ではないが幸せな家庭だった。
小学校に入った吾郎は前世に過ごした時間を思い出して懐かしんでいたが、
途中で飽きてしまった。
何せ1+1をもう一度1からやるような物なのだ。
それでも6年間耐え、吾郎は中学生になった。
昔はほとんどが受験せず公立へ行ったと言うのに、吾郎の友人は皆が私立国立へ行ってしまい、吾郎は1人になってしまった。
中学生の話題についていけない吾郎は存在感を薄くし、
楽しくない学生生活を送った。
時は流れて吾郎は大人になった。
吾郎は地獄に堕ち牛頭鬼になるまで努めていた業界の会社に入った。
一度地獄に堕ちる前働いていたのだから簡単だろうと思い、齢30を越えるまで就職をしなかった吾郎は、ハラスメントやペーパーレスについてよく知らなかった上、
コピー機すらまともに使えないので仕事を与えられる機会が減っていった。
それでも努力し、4年ほどで課長になった吾郎。
まだハラスメントを理解していない吾郎は、新入社員を怒鳴りつけ警察沙汰になってしまった。懲戒免職され失業保険も降りない上、再就職も厳しく親からも縁を切られた吾郎は、とうとう首を吊ってしまった。
閻魔大王「次の者、山下吾郎。死因は自殺。山下…?貴様牛頭鬼ではないか。せっかく今世に戻れたのに自ら命を断つとは…。何をしていたのだ?」
吾郎「本物の地獄を見てまいりました。どうか今度は永遠に蘇らないようにしてください」
かくして吾郎もとい牛頭鬼は無限地獄へ落ちた。
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