第7話 王様

昔々あるところに、エトールという名前のいばった王様がいました。


この王様は、魔法の杖や雷の剣や黄金の冠など、

素晴らしいものを持っていますが、これらを使い民を脅かして楽しんでいました。


王様は自分の娘大変気に入っておりました。

この娘は隣の国の王様が

「王の座につく者に養子に与える」

といい、王様が育てているのです。


この娘はとても利口で、王様はそれを喜んでおりました。

そのため、娘に有利になる政策ばかりしています。


そんな王様に嫌気が差した平民たちは、協力して王様の冠を盗んでしまいました。


王様は怒り狂い、探偵に取り戻すよう命じました。


探偵「では、報酬に王様の杖をいただきます」


王様「よかろう!なんとしても取り戻せ!」


数日が経ち、探偵は見事取り返してきました。


探偵「では、約束通り」


王様は杖を渡しました。


次に盗まれたのは王様のマントでした。


王様「ワシのマントを取り戻せ!」


探偵「報酬は、王様の剣をいただきます」


王様「よい!!早く取り戻すのだ!」


探偵「しかし申し上げます。そんなに財産をお使いになられて良いものでしょうか?いつか後悔いたしますよ」


王様「ワシに指図する暇があったら取り戻すのだ!!」


そして数日後、又しても取り戻した探偵は王様から剣をもらいました。


次もその次もワインや金貨など色々なものが盗まれ、そのたびに王様は全財産や冠や部下を失いました。


そして明くる日、王様の娘が攫われました。


王様「ワシの娘を取り戻してこい!」


探偵「しかし、王様にはもう報酬になるものがございません」


王様「何を言うか!取り戻さねば牢屋にぶち込むぞ!!」


探偵「兵士も看守も皆私がもらい受けました」


王様「ならば杖の魔法と剣の雷を喰らえ!」


探偵「剣も魔法の杖も私のものです」


王様「なんと…どうにか助けてくれないか!?」


探偵「お諦めください。だから申したのです。いつか後悔なさると」


王様は言葉を失い、膝から崩れ落ちました。

涙を流す王様を見下しながら、探偵は言います。


探偵「いえ、一つございました。王様の地位をいただきたい」


王様「…地位か…。良いだろう…。だから娘を!」


探偵「承知いたしました」


数日後、探偵は娘を連れて城を訪れました。


探偵「エトールよ。娘を連れてきたぞ」


王様「貴様!王に向かって何たる態度!!」


探偵「お前が王なのはついさっきまで。今この瞬間から王は私なのだ」


エトール「な…ならばあの契約は破棄だ!」


王様「お前は嘘をついたのか。牢にぶち込んでやる」


ゾロゾロと兵士がやってきました。

王様は青い顔をして泣き出しました。


エトール「最後に娘に合わせてくれ…」


王様「あの娘は『王の娘』だ。今の王は私。つまりあの娘はお前の娘ではない」


エトール「そんな…。フフフ……フハハハ!!」


エトールは狂ったように笑い出しました。

焦点の合わない目をギラつかせ、エトールは外に逃げ出しました。


兵士「エトール!!待て!!」


王様「よい。逃がしてやるんだ。あの哀れな者に唯一残った命を楽しませてやろう」


兵士「はぁ…?」


王様「いやなに、アイツにワインを返したとき、実は致死毒を混ぜていたのだ」


エトールは森の中で死にました。

エトールの死体は布切れのマントや木の枝の杖を持っていたそうです。

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