第2話 n人目の自分

なあ、アンタ本当に良いのか?

自分が2人いるってのは気分がいいもんじゃねーぞ?


あぁ分かった。じゃ、こいつを一筆頼むぜ。


ん?心配するな。俺は腕は確かだ。

人間を増やすなんて安いもんさ。


しっかし…。アンタも変な人だよ。

自分をもう1人作りたい、なんて。


恋人とかペットとか、そういうのなら何度かやったがね。

聞きたいんだが、なんでそんなことするんだい?

いやいや、安心してくれ。アンタのことを探ってんじゃない。

ただ気になったのさ。


…なるほど。身代わりか。

確かに2人アンタがいればムショに入るのはどっちか1人。片方は助かるわけだ。

でも人殺しは磔刑だ。自分か自分のクローンが死ぬんだぜ?


ふーん。肝が据わってやがる。


あ?別に密告なんてしねーよ。

俺だって表の道を堂々と歩けねーんだ。


オッケー。サインもしてあるな。


最後に値段についてだ。

500万…と言いたいところだがアンタと俺の仲だ。


200万。100万は流石に…勘弁してくれよ。150万だ。


よしよし150万な。でもアンタ…。



本当に覚えてねーんだな。


何をって?…実は俺、アンタをな…。


いや、言わせないでくれよ。


おいおい。そんな物騒なモンしまってくれよ。


分かった。言う。


俺はアンタを殺した。

アンタは俺が作ったクローンなんだ。


記憶?俺が作ったんだ。そんくらい出来るさ。


なんだよ。怒るのか?


アンタついさっき言ったじゃねぇか。


「自分と同じ心を持っていればそれは自分だ」って。


それに殺したのだってアンタに貸した200万を返さないからだ。

今日の感じを見るに金持ってねーんだろ?


アンタは最低だ。あーなんかまたムカついてきたぜ。

もう一回…ぶっ殺してやりたいくらいにな。


逃げんのか?さっき署名したから無駄だ。

こいつには呪いがついてて逃げられねーのさ。


その拳銃も入り口についてる壊す魔法には勝てなかった様だしな。


じゃあな。2代目。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


よお。気分はどーだ?

何言ってんだ?今クローンが出来たところだぜ。


へぇ。すげー話だ。アンタ小説家にでもなれるかもな。


あいあい。金は受け取ったぞ。


そのクローン、あと一時間したら動き出すからな。


おぉ。バイバイ。


…3代目。

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