第5話 蟲が来た 3

「...長かったな」

神楽かぐら!」


俺は勝ったのが嬉しくて神楽に抱きついた


「抱きつくな!そんな見た目でも中身は男だろう」

「戻れないけどな」

「......掘り返すのはやめてくれないか?」

「無理」

「...すまない」

「...それはそうと少しは褒めてくれても良くないか?本当に死ぬかと思ったんだが?」

「はあ、...まあ初めてにしてはよくやったのではないか?正直初戦が飛蟲では荷が重いかもしれぬと思っておったからな」


そう言って神楽は俺の頭を撫でてきた

頭を撫でてほしいなんて言った覚えはないんだけどな...

まあいいか、なんか落ち着くし


「というか神楽も飛蟲ひちゅうは荷が重いと思ってたんじゃないか」

「初戦には、な。飛蟲自体はそこまで強くない」

「ただ飛蟲の外骨格を破壊できないうちに戦うとかなり大変なだけだ」

「やっぱり大変なんじゃないか」

「倒せただろ?」

「動きまくる狙いにくい首を狙い続けてな!最後なんて口は開けないは首は警戒されてるはでほんと大変だったんだからな」

祐樹ゆうきよ、もちろん首はダメージが大きいだが無理に狙わなくてもいいのだぞ?」


ん?


「首以外どこを狙えって?」

「ダメージは少ないが胴体の外骨格、背中側と腹側の間に隙間があるぞ?」


......は?

あの苦労は何だったんだ?


「なんで教えてくれなかったんだ?」

「言ったと思うが教えたら意味がなくなるであろう。自分で気づき工夫できるようにならないと死ぬぞ」


どうやら割と本気なようだ

...からかっている感じだったら反論できたのに


「今度飛蟲に出会ったらそうやって戦うよ」

「ああ、そうしろ」

「もっとも次出会う時に外骨格を割れるだけの力をつければいいだけだがな」

「...ちなみにどれぐらいで出来そうなんだ?」

「うむ...そうだな」


神楽は落ちていた棒を拾った


「何をするんだ?」

「今の強さをこれぐらいだとしよう」


そういって1センチほどの線を神楽は引いた


「そして飛蟲の外骨格が割れるのは...」

「どのへんなんだ?」

「.......」


神楽は線を引きながら歩きだしている


「どこまでいくんだ?」


10秒ほど歩いただろうか


「このあたりであろう」


......


「このあたりだって?」

「ああ、だいたいだがな」

「最初の位置からかなり遠いが?」

「ああ、これぐらいであっている」

「つまり...あれか?飛蟲の外骨格を割れる奴らからしたら俺の成長はほとんど変わってないのと同じなんだな?」

「いや、外骨格を割るのは純粋な力だ。今日貴様が育てたのは技術面だ」

「そうか」


神楽も認めてはくれているのだな


「まぁ強い神刀しんとうからしたら数ミリも変わってなさそうだがな」


前言撤回、あんま認めてくれてないかもしれない


「でも外骨格に傷はついたぞ?それでもこんなに差があるのか?」

「ああ、ある」

「飛蟲の外骨格は外側になればなるほど柔らかくなっていく、貴様が切ったのは一番内側が金属だとしても豆腐ぐらいのものだ」

「全力で切れたのが豆腐ぐらいかよ」


まだまだ先は長そうだ

.......長すぎて嫌になるぐらいには


「そういえば祐樹ゆうき、身体強化を解かないのか?」

「あ、」


思い出してしまった

1時間は使いっぱなしだったんだ、しかも4~50分は全力で動いていたしな

はぁ、終わった


「俺は耐えれるんだろうか?」

「無理だろうな」

「無理!?」

「ああ、意識を保ってもいられないだろう」

「それはやばいやつでは?」

「持っている刀が妾で良かったな。看病ぐらいはしてやる」

「苦痛に耐えられないのは決まっているのか?」

「まあまず耐えられないだろう。というか変に耐えたほうが辛いぞ?」

「1人ならともかく妾に任せたくれても良いのだぞ」


...1人でいるんじゃなくて神楽といるだけで安心するな


「...じゃあ解くか」


...まてよ

今俺は身体は女の子だ

変化も解けない......


「なあ神楽」

「なんだ?」

「変化って解けないんだよな?」

「今更何を言っているんだ?」

「だよな...」


...つまり女子の状態で倒れろと?


「今身体は女の子なんだが...」

「ああ、そのことか。その身体に慣れるのも大事だ」

「だからって」

「まずその体に対しての抵抗感を消せ」

「簡単には消せないし、消せたとしてもこの身体で倒れたくない」

「安心しろ、ここには妾しかいないし祐樹のことを襲ったりはしないぞ」

「確かにそうかもしれないが...」


まぁ信じるしかないか


「あとその姿の貴様は見ていて可愛いし面白いから戻れるようになっても戻らないでいいぞ」


...これは俺キレても良いやつじゃないか?


スー、ハー、スー、ハー、

ふう、少し落ち着いた

からかい返してやるか


「俺から見たら神楽も十分すぎるぐらい可愛いけどな」

「なっ...祐樹お前何を言って」


...照れてる

不覚にも本当に可愛いと思ってしまった

いや、可愛いのは本当なんだが


「本気だぞ?」

「っ...もういいだろ」

「はやく身体強化を解いたほうが良いぞ」

「ああ...そうだな」


「...襲わないよな?」

「約束するか?」

「する」

「妾のことを信用して無さすぎではないか?」

「さっきの発言のせいなんだが」

「大丈夫だ、そこは安心してもらっていい」

「...わかった」


覚悟を決めるしかないか...


神楽がほっぺをつついてきた


...覚悟を決めているところに

こっちは切腹するような気持ちなんだぞ


「ふう」


そうして俺は身体強化を解いた


「っ...」


一気に疲労感が押し寄せてきた、

言葉にもできないような疲労感が


そしてすぐに激痛も襲ってきた

この世の痛みをすべて感じているのかもしれない


そこで俺の意識は途切れた


―――――――――――――――


神楽はのイメージがノートの方にあります。良ければ見ていってあげてください

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093088329306018

↑これ

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