第4話 蟲が来た 2

俺は飛び上がって飛蟲ひちゅうの少し上に行く

そして思いっきり刀を振り下ろす

しかし、ガンッ!と硬い音がなっただけだ


「チッ、硬い」


飛蟲の外骨格だろうか?

もし岩だったら真っ二つになってるような攻撃でも少し外骨格に傷がついただけだ。

傷で燃えている妖炎ようえんもダメージになっていないだろう


祐樹ゆうきよ、飛蟲は蟲としては弱い方じゃが貴様より弱いわけではない。むしろ貴様よりも強いくらいじゃ。外骨格を切るんじゃないそんなことが出来るようになるのはまだ先じゃ、外骨格の隙間、そこを狙わなければ勝てぬぞ」


外骨格の隙間......か

無茶な事を言ってくれる

あんなのほとんど隙間がない上に動き回るじゃないか


「隙間攻撃を入れれるようになれば少し切りつけるだけでも妖炎で倒せる。まあ理想は刀での攻撃で致命傷を負わせることだがな」

「妖炎じゃ倒せないって言ってなかったか?」

「何十時間かかるかは知らんぞ」

「じゃあ言うなよ...」


ということは今必要とされているのは身体と刀のコントロールか...


「飛蟲の動きをよく見るのだ」

「観察か......」


っ!

飛蟲が振りかぶりがなにか吐き出してきた。


「あぶねえ」


吐き出され液体からは刺激臭がしていた


「避けて正解じゃよ祐樹」

「あの液体はなんだ?」

「あれは強い酸性の液体じゃ、すぐにではなくとも戦闘が長引けば溶けただろうな」


本当に危なかったみたいだ

......そういえば、あいつの腹なら切れるか?


飛蟲に向かって走り、直前で滑る

飛蟲の真下に来た時、刀を飛蟲に向かって突き刺す

まっすぐ突かれた刀は飛蟲の腹にささ...らずに跳ね返された

しかも、ガッ!というような外骨格を叩いたような音がした


「腹のところもで硬いのかよ」

「当たり前じゃ、蟲と言っても生物じゃからな。そんなあからさまな弱点なんてない」

「......あれは生物と言って良いのか?」

「生物ではあるだろう」

「本当に外骨格の隙間を狙うしかなさそうだな」

「さっきからそう言ってあるであろう」

「あいつの外骨格に隙間はあるのか?」

「あるぞ、安心しろ」


「!」

飛蟲がまた振りかぶっている

吐き出したら横に避ける...つもりだったが


「キィィィィィ」

「うるさっ!」


つい反射的に耳を覆ってしまった

そうしているうちに飛蟲がこちらに突っ込んできた


あの角で突っ込まれたらかなり危ない

俺はなんとかギリギリで避けることができた

......もしかしてこれは、


「試してみる価値がありそうだな」


俺は飛蟲に正面から突っ込...まずに直前で左に避けた


「やっぱりだ」


飛蟲はこちらを向いた時に首の外骨格の反対側の隙間があらわになる


「ほう、そこに気づくか、気づいたのだとすれば倒せるな」

「なんか意味深な反応だな」

「気にするな」


俺はもう一度同じ動きをし...今度は止まらずに飛蟲の下を通り反対側へ移動した

そして刀を突き刺し、抜く

そして飛蟲から離れる


「ギィィィィィ」


かなりうるさい

まあ刀を突き刺して、さらに燃えているのだ

当然の反応か

燃えているのだ、一旦避けるのに徹する


――――――――――――――――――――


.......5分はたっただろうか。

一向に死ぬ気配を見せない


「さっきから妖炎で燃えているはずなのに」

「ああ、燃えているな」

神楽かぐら!」

「祐樹、妾がいるのを忘れていたような反応じゃな」

「そんなこと無いって」

「そうか?」


......正直忘れていた

避けるだけでも精一杯だし神楽は何も喋らなかったし


「それはそうと、あれはどういうことだ?」

「この前も言ったじゃろう、祐樹の妖炎は弱い虫には効く、しかし致命傷にはならないと」

「さっきからうるさいのはダメージを与えている証拠でもある」

「さっきやったやり方でも良い、とりあえず切ってダメージを与えろ」


同じやり方で今度は右側に刀を差し込んだ

ただ今度は刀を抜く時にただ抜くのではなく掻き切るように刀を抜いて


「ギャァァァ!」


飛蟲はおそらく痛み、そして怒りで荒れていた

おそらくもうすぐ倒せるのだろう


「ふう、あとちょっとだ」

「祐樹、貴様は何を言っておるのじゃ?」

「?」

「あとちょっと、といっておるがまだ1割もダメージを与えられていないぞ?」

「......は?」


嘘だろ

あんなに頑張って1割しか削れていないのか?


「ほんとじゃ。ここで嘘を言ったところで意味はないからな」


また飛蟲が振りかぶっている


「来たら避ける......」


......もしかしたら


飛蟲が液体を吐き出してきた

俺は避ける

ただし横ではなく前へ

吐き出された瞬間俺はしゃがみ前へ飛ぶ

そして刀を飛蟲の口の中に差し込む

今度はしっかりと刀が刺さった

そして刀の妖炎を思いっきり燃やす

しばらくは消えないだろう

更に今度も身体の中を切り裂くようにしながら刀を抜く


そして俺は1度飛蟲から離れた


「神楽あれはどれぐらい削れているんだ?」

「さっきので1割、元から1割、と言ったところじゃな」

「まだ2割しか削れてないのかよ、絶望だな」

「いや、祐樹はなんだかんだ言いつつもまだ1度も攻撃を食らっていないじゃろう。それだけでかなり楽じゃ」

「そして何より長いと感じているかもしれないがまだ10分経っていないぐらいだ」

「まだ10分経っていないのか......」

「てっきり30分ぐらい戦ってるものだと......」

「まだ10分じゃ、だから戦え」

「10分で2割か......身体強化を解いた後が辛そうだ」


2割だとしても確実に削れてはいるんだ

蟲だっていつか死ぬ


そう自分に言い聞かせることにした


「ふう、集中!」


飛蟲の首に刀を刺して妖炎で燃やす


避ける、避ける、また刺して燃やす


そんなことを30分ほど繰り返していただろうか

やっと飛蟲は地に落ちた

油断はできない


外骨格の隙間に刀を刺し、燃やす

そんなことを何回か繰り返す


飛蟲は動きそうにない


......終わったのか


終わったんだ


「よっっっしゃあ!」

「終わった!」

「勝てた!!」


「......長かったな」

「神楽!」

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