第19話 唇柔らかいんだね
次はなにを作ろうか、
作業療法で考えていた。
ペンギンはリサさんにあげたし
「あ、」
「気になるものあった?」
毛糸で作る小さいくまのぬいぐるみ。
これにしようと決めた。
「これはねー、結構時間かかるけど
大丈夫そう?」
「はい、時間はあるので」
リサさんは相変わらず
計算の問題をやっていた。
「今日はなにをやっているんですか?」
「かけ算…」
苦手なんだよーって言いながらも
もくもくとやっている。
その姿を見ながら
私もくまのぬいぐるみに取り掛かった。
※※※
「リサさん?大丈夫ですか?」
「ん?どうかした?」
なんだか、ぼーっとしていて
あぁ、また薬吐いたのかななんて思った。
「リョウさんのとこ、行きますか?」
「ん、大丈夫。」
なんだか、ふわふわしていて
意識がこっちにないような、
また抜け出すんじゃないかと思って
怖くなった。
「リサさん、これあげます」
渡したのは、ソフトな食感のクッキー。
「カオリー!ほんとあたしの好みわかってる」
なんて抱きついてきた。
「薬、吐かないでくださいね…」
と、言いながら親が大量にもってきた
お菓子の中からマシュマロをとった。
「あ!それも食べたーい!」
「リサさんにはクッキーたくさん
あるじゃないですか!」
わいわいとしてると
リサさんが急に真剣な顔をした。
「カオリ、目瞑って」
「え、こうですか?」
目を瞑る。
ふわっと唇になにか柔らかいものが
当たった。
びっくりして目を開けたら
リサさんが私にキスをしていた。
「な、なんですか!!」
あぁ、きっと顔真っ赤だと思いつつ
リサさんを見つめる。
「カオリ、唇柔らかいんだね」
なんて言われてむぎゅーっと
マシュマロをリサさんの唇に
押し当てる。
「弄ばないでください!」
あははと、笑いながら
笑うリサさんを見てなぜ
私だけがこんなに照れているのか
不思議だった。
ましてや、ファーストキスだった。
「リサさんは誰にでもするんですか」
と、聞くとあっけらかんとした顔で
私を見つめる。
「カオリだけ、だよ?」
その言葉にまた恥ずかしくなって
リサさんを押しのける。
それでも、笑うリサさんは不思議だ。
マシュマロが食べられなくなった。
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