第18話 親

朝の洗顔を終わらせて

歯磨きをしているとリサさんが来た。

「ふあーおはよおー」


歯磨きを終えて

「おはようございます」


「あ、これ貸してえー」

と、歯磨き粉を指さす。


どうぞ、と渡して

リサさんは嬉しそうだった。


「今日の朝ごはんはなんとオムレツなのだ」

と、後ろからユウさんが言う。

あまりご飯とか気にしてないと思っていたが

オムレツは好きなようだ。


「おはようございます、オムレツ好きなんですか?」


「ここのオムレツはさいこーだよお」


「でも小さいから足りない足りない」

と、リサさんが言う。


そんなに美味しいのか、と思い

私も楽しみになった。

病院食は美味しくないイメージだったが

ここの病院のごはんは美味しいと思う。


「小さい…」


「ほらね!カオリも言ってんじゃん!」

ほんとにミニサイズだった。

オムレツの横にはウインナーが

2本ついている。


如何にも朝ごはん、という感じ。


「ユウさん、よかったら食べます?」

と、オムレツを指さした。


「え!激アツ!ほんとにいーの?」


「はい、あまり卵料理苦手で…」


じゃあ飴、たくさんあげちゃうからなーと言って

オムレツを食べる。

「うわ!ずる!カオリ!」


「え!なんか悪いことしました?」


あたしにはくれないのーと

リサさんがごねる。

リサさんには昨日、恥ずかしいことを

されたのでなんだか恥ずかしかった。


『カネコ カオリさん面会です』

アナウンスが鳴る。


「カオリ、面会の予定だったの?」


「いや…特にないですけど…」


みんなにいってきますと言いながら

面会室に行く。


「カオリ…!」


「お母さん…」


面会しにきたのは母親だった。

正直なにを話せばいいのかわからなかった。

というか、話すこともない。

ずっと黙っていると母親が大きな袋を出した。


「カオリの好きなお菓子とかもってきたから…」


「…こんなにいらないよ」


看護師がチェックする。

「すべて大丈夫です。カネコさん

面会が終わったらこのまま部屋に」


母親がもってきたものはジュースやら

大量のお菓子やら忘れてきた電子辞書だった。


「カオリ、ここでうまくやっていけてるの?」


「うん、問題はない」


また、沈黙だ。


この人を目の前にすると

なにを話せばいいかわからない。

この空気が嫌だ。


「お母さん遠いとこまできてくれて

申し訳ないけど、今日はもう帰って」


早くリサさんと話したかった。

ユウさんにも飴を貰ってない。

カナエちゃんのパズルもしてない。

この人と会う時間があればみんなと

楽しいことができる。と、思った。


「カオリ、次はお兄ちゃんもつれてくるからね


身体に気をつけて」と、言って母親は

帰って行った。


大きな袋を持って部屋に行った。

どっと疲れた。

少し横になって目をつむっていた。


「カオリ」


ひゃあ!と思わず声が出た。


「リサさん、やめてください!」


「あはは、面会どーだった?」


「ただ、母親が来ただけです。

大量のお菓子を持ってきて。」


お菓子ー!と喜んでる

リサさんを見て面会の疲れは吹き飛んだ。

お世話になっているみんなに

おすそ分けでもしようと考えながら。

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