第10話 面会

「リサさん、おはようございます」


「その、さん呼びやめよーよ」


だって、なんだか私より

年上な感じがするから…なんて思っていた。

今日もリサさんは薬を飲んだ後

すぐ部屋から飛び出す。


また、吐いてるのかなとか思って

心配になる。


『カネコ カオリさん面会です』


アナウンスが流れる。


面会。


いきなりのことで頭が回らない。

もしかして、私をここにいれた母親が

きたのかと不安になる。


パジャマを着替えてナースステーションに行く。


「カオリです。面会があると聞いたのですが」


「はい、来てますよ。ウエノ タツヤさんです」


来たのは学校の担任だった。

どうしてここにいるのがわかったのか

なにを話に来たのか

私がいじめられているのを

見て見ぬふりをした人物に会いたくなかった。


「カオリ、面会なの?」

リサさんが横にいた。

何故だかホッとした。


「はい、担任の先生です。」


「面会したくないときは拒否できるんだよ」


そう教えてくれた。


でもここで逃げたら負けな気がする。

「いや、面会してきます。」


「ロビーで待ってるからね」

と、リサさんが言った。


※※※


「面会の時は看護師がひとり同伴します」


「カネコ!びっくりしたよ入院したって聞いて」


「誰からここにいること

きいたんですか。私にプライベートはないんですか」


目の前にして、威圧的になってしまった。

ここに入院して、やっと慣れた頃だったのに。

学校のこと忘れられたと思っていたのに。


「お母さんから聞いたんだよ

あと、これ届けようと思ってね」


参考書とプリント。


「ここにいても、勉強はできるだろ?」


「ありがとうございます、

もう帰ってください。」


おもわず口に出してしまった。


「学校でみんな待ってるぞ?」


「そんな訳ないじゃないですか!!!」

バンッと机を叩いて立ち上がる。

「カネコさん、まず落ち着いて…」

看護師が言う。


「みんなカネコが戻ってきて欲しいって

言ってるんだぞ」


その一言でプツンと頭の糸が切れた。


「ふざけんなっ!」


息が荒くなる。苦しい。

うまく呼吸ができない。

過呼吸だ、と頭の中でわかった。


そこからはあまり記憶がなく

ふと意識を覚ましたら病室にいた。


「あ、起きた」


「顔色わるいねえ〜」


「リサさん、ユウさんなんでここに」


面会の途中で過呼吸で倒れて

そこから意識を飛ばしたらしい。

先生がどうなったのかはわからない。

見あたるところには参考書もプリントもない。


「カオリー、心配したよー」

よしよしと、リサさんが頭を撫でる。


「すみません、面会の途中から記憶なくて」


「相当、つらかったんだね。」


「お母さんでも来たのお?」


「いや、学校の担任です。参考書とプリント

もってきて、なんか色々言われて…」


情けないです、と言うと


ユウさんがこれあーげると渡してきた

「飴…?」


「糖分大事だよお」


リサさんが笑う。

「ユウは数え切れないほど飴もってるからねえ」


「飴はあたしの安定剤だもん〜」


2人の言い合いをみて

なんだか笑いが込み上げてきた。


もう少しここにいよう、そう思った日だった。

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