第9話 カナエという人間
約束通り14時。
ユウさんの部屋にリサさんと行った。
コンコン。
「はいはい、おきてますよお」
気だるそうにユウさんが出てきた。
32歳なんて見えないほど可愛いパジャマで。
「じゃ、行こっか
カナエの部屋は一日3万のちょー
金持ちしかはいれない部屋」
ガラッ
「カナエー!遊びに来たよーん!」
すごく細くちらっと見えてる手首からは
点滴の線が見えた。
私を指さして、首を傾げる。
「カナエ、この子はカオリ。
ここの新人さんだよ」
小さく細い手が私の手を掴む。
「ほらね、カオリなら大丈夫だったでしょ」
「カオリちゃんは優しそーな雰囲気だもんねえ」
と、ユウさんが言う。
「カナエは一切ご飯食べれないの、
それでなのか脳に栄養いってなくて言葉も
しゃべれない。」
リサさんが言った。
カナエちゃんは私の手を掴んで離さない。
何か言いたげだった。
「カナエ、カオリもこのグループに
いれていいかな?」
と、リサさんが言うと
カナエちゃんが頷く。
一応、気に入られたのかな。
細い指が私の手を、にぎにぎしている。
ユウさんが言った
「これ、やっちゃおー」
部屋はアンティークな感じの家具で
揃っている。
ペッドは天蓋つきだった。
天使の置物がたくさんある。
カナエちゃんが好きなのかあえて聞かなかった。
ぽんぽんと横に座ってと
カナエちゃんが私に合図する。
「いいの?」
天使のような優しい笑顔だった。
座ると腕を組まれてくっついて来た。
「カナエ、カオリのこと気に入ったみたいだよ」
二ヒヒとリサさんが笑う。
リサさんとユウさんが
パズルをやっている。
「それなんですか?」
「カナエの親が、送ってきた1000ピースの
パズル。カナエに出来るわけないのにさあ」
「このパズルが完成したら
カナエがご飯たべるって約束したわけ」
ユウさんと、リサさんが言う。
まだまだ完成しなさそうなその
パズルを見てなんだか悲しくなった。
「カナエちゃん、パズルゆっくりやっていこうね」
と、私が言うとカナエちゃんが
悲しそうな顔をする。
「カナエ、言いたいことは
そのノートに書くんだよ」とリサさんが言う。
カナエちゃんがなにか書いている
ほら、と見せられると
『かんせいしたら、みんないなくなる?』と
書いてあった。
「そんなことないよ!パズルができても
カナエちゃんの部屋に遊びに来るよ!」
「カナエ、かなりの不安症だから」
ユウさんがぽつりと呟いた。
ぎゅうと、カナエちゃんが
抱きついてきた。
甘えん坊の妹をもったみたいだった。
カナエちゃんは不安症と重度の摂食障害を
もっているらしい。
こんなに若いのに、と言っても私もまだ17歳だ。
14歳でここまで至ったのは
なにか原因があったんだろう。
深くは聞かなかったけど、
聞いちゃ行けない気がしたのは確かだ。
「カナエちゃん、また遊びに来ていい?」
と言うと
カナエちゃんが笑う。
この天使のような優しい笑顔を
ぬくもりを両親は知っているのだろうか。
余りにも若すぎるカナエちゃんが
私はほっとけなかった。
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