第7話 作業療法
『起床の時間です。みなさん起床の時間です』
と、アナウンスが鳴る。
まだ眠剤が残ってるのか
気怠い身体を無理やり起こす。
洗面所に行って顔を洗いにいこうとすると、
「カオリ、おはよ〜」
「リサさん、おはようございます」
「顔洗いに行くの?あたしも行くー」
なんで着いてくるのか、不思議だった。
「ぷはっ」
顔を洗って歯磨きをする。
「カオリの歯磨き粉、それ高いやつじゃん!」
歯磨きを終えて、
「使ってみますか?嫌じゃなければ」
「やったー!」
朝から元気だな、と思う。
私なんてまだ眠剤が残ってて
ふらつくのに。
「カオリ、ありがとね、あ、」
「なんですか?」
「カオリはまだ出たことないよね、
今日は作業療法があるんだよ」
「作業療法…」
「大丈夫、大丈夫!たのしーよ!」
肩を叩かれてリサが笑う。
※※※
「皆さーん、作業療法始まりますよー!」
と、OPの人がロビーに来た。
ぞろぞろと、人が集まりそれぞれ
毛糸でぬいぐるみを作ったり、
革細工でコースターを作っている。
「カオリさんはじめまして、OPのスギモトです」
「は、初めまして」
「ここではなんでもできるんですよ
革細工だったり、編み物、ぬりえ、毛糸で小物入れ
を作ったり」
「小物入れ…」
「興味あるかな?」
「小物入れ、作ってみたいです」
入院して3日で、私もここに馴染んでいる
気がした。
「この、ペンギンのやつ作ってみたいです」
ペンギンの小さな小物入れ。
丁度、めがねがさせるくらいのやつ。
コンタクトだったので
メガネを使うことは無いが
自分の殺風景の棚の上には
あったら可愛いだろうなと思った。
「じゃあ、この壁紙に毛糸をあんで行ってね
これを4枚合わせると体ができるの」
作業療法の人が教えてくれた。
リサさんは、ひたすら割り算の
勉強をしていた。
「できなーい!こんなの!」と
大声で言うからおもわず笑ってしまった。
「カオリ!笑った!」
「え?」
「カオリの笑った顔、初めて見た」
なんだか照れくさかった。
「そ、そんなことどうでもいいじゃないですか」
自分の笑った顔に気づく
リサさんはほんとに良く周りを見てるんだなと
思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます