第44話
「ククリっ! 教えてほしい!
この男のどこが、俺に勝っていたというんだ?
俺は、見た目だって、悪くない! この男に負けてなどいない……、いや、むしろ勝っているはずだ!
剣術だって、もちろん上だし、もし俺がこの男に劣っているところがあるとすれば、それは魔法だけだ!
ククリっ、君にとって魔法はそれほど重要なことなのかっ!?
俺は君をこの上なく大事にしてきたはずだ! なんでも君を一番にしてきた。総合的な面で判断すれば、俺は男としてはルカより絶対に上のはずだ!
それなのに、ククリ……、君は俺に、こんな、仕打ちを……っ」
へえー、アスランって、割と自分に自信があるタイプだったんだ……、ちょっと意外……、ってそんなことではなく!
「アスラン、ちょっと、一体、何言ってるのか……、ねえ、早く……」
俺の下では、相変わらず恍惚の表情で、ルカが俺を見上げている。
「ククリ様……、好き……、愛しています。私をククリ様の好きにして……」
――もうっ、こいつキモいから、一刻も早く離れたいんですけどっ!!
「ククリ、教えてほしい……、なぜ、君は、ルカと……」
なおも訴えかけてくるアスランに、俺はついに、キレた!
「ええーい、さっきから何を訳のわからんことを、ゴチャゴチャと、うるさ――いっ!
俺が今、ルカを仕留めようとしているこの姿が見えんのかっ!?
さっさと加勢しろっ、このバカアスランっ!
あと、何を勘違いしてるのか知らないけど、俺の初恋はアスラン、お前で、それはずーっと今も続いてるの!
俺は、諦めの悪い、しつこい男なの! だから、アスラン、俺は今だって、変わらずお前を……」
「ククリ、愛してる!」
「え?」
突然目の前にくる超絶美形のどアップ。
え、何?
今アスランってば、時空超えてきた!?
「アスランっ、貴様っ……、いつか絶対に殺す!」
目をやると、魔法の鎖で拘束されたルカが、すでに床に転ばされている……。
なに、この早業……!?
そういえば、ルカには劣るだけで、アスランも魔法の成績はいつもトップクラスだった……。
「それはこっちのセリフだ! 俺のククリを汚そうとした罪……、死を持って償ってもらう!
――クソッ、俺だってまだククリと同じベッドに入ったことがないというのにっ」
私怨にまみれたアスランは、憎々しげにルカを睨みつける。
「フン、いい子のアスランは義理の両親の言いつけを守って、いままでククリ様を指をくわえて眺めているだけだったんだろう?
ははっ、いい気味だ。アスラン、お前は知らないだろう……、ククリ様の首筋が、どれだけ甘いか……」
ルカはぺろりと自分の唇を舐めた。
「殺す!」
もはや正気を失ったアスランが、ルカに向かって長剣を振り上げる。
「わあああああっ、やめろ、アスラン! 暴力反対!
暴力ではなにも解決しない!!」
俺は必死で後ろからアスランの腰にしがみつく。
「離して、ククリ! 俺は今、ここでコイツの息の根を止めておかなければならない!」
「ちょ、殺すとかやりすぎだし! そもそも、俺、特に何もされてないし、無傷だし! ねっ、ほら!」
俺の言葉に、アスランは振り返り、俺をじっと見つめる。
――その目は、ルカに引きちぎられた俺の襟元で、止まった。
「やはり、殺す!」
目の座ったアスランが、長剣を握り直す。
――まずい、このままではこの部屋が血の海になってしまう!!
その時俺は、思いついた。
こういう時は――!!
そう、寝取られのあとの、ラブラブ王道展開に持ち込んだっ!!
「うわああっ、わかった。アスランの気持ちは、わかったから! 大丈夫。俺はもう大丈夫だから……、
あのね、アスラン……。
それなら、アスラン……、ルカに俺がされたこと全部、今からアスランが、俺に、上書き、して?」
前世のWEBコミックでよくあった展開! 寝取られたOR寝取られそうになった彼女を、彼氏がお清めセックスで上書きって、例のアレだ!
――まあ、俺は別に犯されたりしては、いないんだけど……。
ちなみに俺も大好物だったこの展開……、
やはり血気盛んな若者に指示される王道パターンには、アスランにも心動かされるものがあったらしい。
「上書き……?」
アスランは長剣を下ろすと、訝しげに俺を見た。
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