修羅場の翌日
「……よっ!」
「……よぉ」
翌日、望と鈴森さんと学食にいる時
深島がゆっくりと近付いてきた。
今まで言い合いの喧嘩をしていたからか返しにくいのだろう、
どこか気まずそうに貸したハンカチを差し出され、素直にそれを受け取る。
だが返した後も少し話をしたそうにその場に立っていた。
流石にこの二人に詳細を言う訳にもいかない。
「ごめん、ちょっと深島と話してくる」
と一言断りを入れ、
深島を連れて自販機横に設置してあるベンチに座った。
「一日しか経ってないけどその後どう?」
「昨日めちゃくちゃ泣いたらなんかどうでもよくなっちゃった。
あんたに言われたからじゃないけど
今はなんであんなのに縋ってたんだろって気持ち」
そりゃ良かった。
自論だけど付き合っていようが付き合っていなかろうが
可愛くないっていう男は死刑レベルだしそれから開放されたなら何より。
流石にこれでも縋っていたらどうしようかと思ったけど。
「それより嘘ついたでしょ。」
「へ?何が?」
「昨日の夜、美紀達があんたに元彼のこと言っちゃったって自首したの。」
自分達から話さないでと言ったくせに呆気なく自白するんだ、あの子達。
と思いながら
「でも僕、男に興味無いのに彼氏奪ったとか言われて嫌だったのは事実だからね」
「恋愛対象が女でそういう格好って、あんた堂々と女湯とか行くタイプ?犯罪だけど」
「行くわけないだろ!
僕が好きなのは可愛い服とかメイクとかアクセとかそういうものだから、
女の子になりたいというのはまた別だよ。
見た目だけ。他は男。」
「ふーん……。
じゃあ鈴森なのはと付き合ってるの?」
「なんでそこで鈴森さんの話になるんだよ。」
「だってあの子明らかにあんたのこと好きじゃん。見ただけで分かる。」
そういや、あのご飯とバスケしか脳がない望ですら初対面で気付いたし、
もしかして鈴森さんって結構好きっていうオーラがダダ漏れなのかもしれない。
ということは同じ大学でも鈴森さんが僕を好きってのを知ってる人多いということだろうか、
変に騒がれてるのそのせいだったり?
と思考を巡らせると深島がだから、と続けて話した。
「だから……
私はあんたのせいで別れたのに、あんたは幸せそうなの見て八つ当たり、っていうのかな。
むしゃくしゃして当たっちゃって…その…ご…」
「ご?」
「ご…ぇ…」
「深島、ちょっと聞き取りにくいかも」
「ごめんって言ってんの!聞き取れ馬鹿!」
「いつもはっきり言うのにごにょごにょ言ってるからじゃん!」
頬が薄らと赤く染まり、どこか落ち着きがない。
強気な性格だしましてや最近まで犬猿の仲だったわけだから言いづらいのだと思った。
でもそれはそれ、これはこれだから。
「一応言っとくけど僕と鈴森さん付き合ってないから」
「え、そうなの?」
「うん。普通の友達。」
告白されたことは鈴森さんの面子に関わることだし伏せといた。
と言ってもバレバレらしいからあまり効果はないだろうけど。
「それと昨日…ありがと。
全然お礼言えてなかったから…」
「別にあいつの言葉に腹立っただけだし気にしないで」
「それでもありがと」
「…うん」
それだけ話して僕は二人の元へ戻った。
深島の一件があり、
深島藍を巡って元彼と僕が喧嘩したという新しい噂が流れ、一悶着したのはまた別の話。
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