嫌われてる理由
深島の友達数人に連れられて来たのはごく普通のファミレスだった。
昼時を過ぎて少し落ち着いた様な空気を感じる。
「ドリンクバーでいいですか?」
「あ、うん」
しかし深島の友達が今更何の用だろうか。
深島自体は僕に対して良くない印象を持ってるのは理解したが、
彼女達は初め以降僕達に近寄らなかったはずだし…と思いながらメロンソーダをコップに注いだ。
席に戻ると早速ですが、とすぐに本題に移ってくれた。
「藍が七咲さんを…その…
嫌っているのはご存知ですか?」
「今日面と向かって嫌いだって言われたから知ってる」
「あまり傷つかないんですね…?」
「慣れてるから」
と言うと少し気まずそうな顔をした。
別にだから気遣ってくれ、と言ってるわけじゃないから気にしなくていいのに。
「その…藍が嫌ってる訳ですが、実は七咲さんが藍の彼氏を奪ったような形になってまして…」
「……はああぁぁぁぁ!?」
思わず立ち上がり大声が出てしまった。
周りから不審な目で見られ、
すみません、と軽くお辞儀をして改めて座り直す。
「深島の彼氏?と面識もないし、
深島とは鈴森さんが悪く言われた時が初対面のはずだ、君達もいたあの時!
なのにどうして僕が深島の彼氏を奪った形になるわけ!?」
なるべく小声になるよう注意しながら、
それはもうマシンガンの如く聞きたいことを全部聞いて詰め寄った。
そのまま聞くと悪女のような人間だ僕は。
そもそも男に興味は無いのに。
「藍には絶対言ったこと内緒にしてください。
…藍、先週彼氏に振られたんです。
その時に引き合いに出されたのが七咲さんで、
あいつは男だけど七咲みたいに女らしい格好とか女子力高い方が好みだったとか、
お前もあいつ見習ったら?とか男に女子力負けて恥ずかしくないのかとか。
挙句の果てに七咲が女だったらなって藍にトドメ刺しちゃって。
でも藍はまだ元彼が好きで…」
つまりは深島に嫌われてる理由は逆恨みということだろうか。
「まぁ僕控えめに言っても最強に可愛いしね」
深島の友達はこいつまじか、と言いたげな顔をしたが、それは事実としてそうだ。
可愛くなる努力もメイクも服もアクセサリーも何一つとして妥協しない自分への賛辞のようなものだ。
それでいて僕のポリシーは僕は今日も可愛いけどあなたも可愛いねというもの。
可愛いの形は人それぞれ、オーダーメイドのようなものだから。
それを認め合うのが一番理想の形だよね、というのが自分自身に素直になって辿り着いた答えだ。
それでいうと深島は女を捨ててる訳では決してない。
服装はストリート系でラフな服が多いけど、
一点一点よれてたり型崩れしてるものは無いし、
シルバーアクセは毎日似てるけど違うデザインでこだわりを感じる。
髪も黒髪に鮮やかな青色のインナーカラーが入っていて、
インナーカラーで脱色してるはずだけど痛みを知らないようにサラサラだし、
前髪も毎日作ってある。
爪はネイルこそしてないけど、
ケアが行き届いてる綺麗な爪をしていた。
これはここ数日深島と言い合いをしてる僕の観察によるものだ。
これのどこが女子力低いと言うのだろうか。
「僕が可愛いのは事実だけど、
でもそれが女の子を傷つけていい理由にはならないんだよね」
教えてくれてありがとう、とドリンクバーの料金を机に置いてファミレスを出た。
深島はどう思うか分からないけど
とりあえず僕が原因で破局なんて不名誉な事実を壊していくとするか。
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夜遅くになるかもしれませんが
今日もう一話上がります
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