二人の姉
ちょっとした昔話を掻い摘んで話したつもりだったけど
鈴森さんがあまりにも深刻な顔で聞くから
「そんなに真剣に聞かれると照れちゃう♡」
とわざとふざけたテンションで空気を壊した。
「す、すいません!
なんか私が知ってる七咲さんはもう既に
最強メンタルの七咲さんだったから…。」
「僕に限らず初めから強い人なんていないよ。
でももしも理解のある家族じゃなくて、
望にも会わない人生だったらって想像すると
なんかゾッとするよね」
想像だけだが下手したら修復不可能なくらいメンタルが壊れてしまってもおかしくないと思った。
「武光くんもそうですけどお姉さん方も素敵な人ですよね。
一度お会いしてみたいかも……」
「あ、会う?いつでも会えると思うけど。
なんなら今日でもいいし。
近いうちに鈴森さん連れていこうかなって思ったから丁度良かった」
「え!?ええええ!?!?
いやいや!私にはまだちょっと早いといいますか、
ちょっとハードルが高いといいますか…!!」
顔を真っ赤にしてどこか焦ってる姿に疑問を抱きながら
スマホで姉達の仕事場のHPを見て予定を確認すると
今日はとても暇そうにしていた。
「今日暇そうだから今日行く?
あ、予定があるなら別日でもいいけど」
「あの、予定は大丈夫ですけど
心構えはだいじょばないです……」
「まあちょっと緊張すると思うけど大丈夫だよ」
なんて話をして姉達に今日行くねとメッセージを送ると
望がのそのそとパンやおにぎりが大量に入って膨れたレジ袋を持って帰ってきた。
「賑やかだけどなんの話してんだ?」
「今日姉達のとこに鈴森さん連れていこうかと思って。」
望は黙って僕とまだ顔の火照りが冷めずガチガチに緊張してる鈴森さんを見比べて
「すれ違いコントでもしてんのか?」
「は?なんで?」
と言ったが望はそれを無視してパンやおにぎりを頬張った。
*
授業後、鈴森さんを連れて姉達の仕事場に顔を出すと
二番目の姉が僕の姿を見て黄色い声を上げた。
「葵〜!どうしたの?爪割れちゃった?」
「割れてないけど今日は
そう言いかけた所で後ろの鈴森さんに気付いた姉が
「愛香姉!葵が女の子連れてきた!」
と声を上げると奥から
え!?と声が聞こえた。
「こんにちは〜!長女の愛香です
パーソナルカラーアナリストしてます」
「次女の
「す、鈴森なのはです!
あ、葵さんとは同じ学科の同級生です!
よろしくお願いします!」
鈴森さんは九十度の深いお辞儀をして
姉達はそこまで畏まらないで、と朗らかに言った。
「愛香ちゃん、鈴森さんのパーソナルカラー見てほしいんだけど。
メイクとかオシャレ頑張るって言ってたから
知ってて損は無いし連れてきたんだよね」
というと鈴森さんはサァッと血の気の引いた顔に変わり、ガクッと項垂れた。
「そ、そうですよね…。
私勝手に浮かれちゃって…なんて滑稽な……
煩悩まみれで本当にお恥ずかしい……」
「あおちゃん、乙女心を振り回しちゃダメじゃない」
「なのはちゃんごめんね!
葵、そっち方面は鈍いし察しも悪いから!」
なんか責められてる?何故?
そのまま鈴森さんと愛香ちゃんはパーソナルカラーを調べに行き、
僕は美優ちゃんとお茶でも飲みながら二人が戻ってくるのを待った。
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