.

「平日なのに練習試合?」


「ああ。

対戦相手の高校、今日創立記念日らしいから

少し早めに来るらしい。」


「ありゃ、じゃあHR終わったら速攻体育館行かなきゃだね」


なんて呑気に昼食を食べ、望に頑張れ~と軽く応援した。

自分は放課後何しようかなとこの時は思っていた。


下校時、昇降口には地元の高校のジャージがいて

思わず固まる。

バスケ部の練習試合って、


「……あれ?七さ、き…?

お前それ……」


その声をする方を見ると中学時代の同級生が数人、

大体みんなここに進学したのは知っていた。


対して今日の僕はピンクのワンピース、

髪だってハーフツインで、

しっかりメイクもしているが

詐欺メイクじゃないから顔は僕そのものだった。


みんなの目には戸惑いや困惑の色が映っていて

お互い無言の変な空気が流れていた。


それに気付いたのか相手の高校の人が

どうかしたか?と声かけた。


「いや、なんか知ってる奴かと思ったけど、

女装してる男に知り合いいねーし、

なんか…気持ちわりーって思って…」


心臓が痛くてうるさい。

怖くて隠して逃げてた僕への罰なのだろう。

いずれバレるものだと思ったけど予想以上にキツくて、

その場を離れたいのに足が縫い付けられたかのようにその場から動けなかった。


「別に気持ち悪くねえだろ。」


背後から声がして振り向くと望が立っていた。


「なんで好きな服着てるだけで気持ち悪いんだよ。

そうやって勝手に批判して突っかかる方がおかしいと俺は思うけど。」


あまり人と話さない望が僕のために声を上げてくれた事に救われた気がした。


その後一緒に来ていた二年のバスケ部から

こら!武光!と怒られてるのが

いまいち格好つかないけどそれが望らしくてつい笑った。


「七咲、また明日な」


「うん、今日勝ったら明日なんか奢るよ」


と行って同級生の傍を通り過ぎ出ようとしたが

同級生の一人から

七咲待てよ、と声をかけられた。


「やっぱ変だよ、お前。

中学の時普通だったじゃん。正気に戻れって。」


望から言われてもなお噛みついてくる言葉に

そろそろ自分自身も強くならなきゃと振り向いた。


「僕にとっては中学までが正気じゃなかったんだよ。

もう好きなものから逃げないし、貫き通すって決めたから。

気持ち悪いとか変だとか思ってくれて構わないけど、

押し付けないで勝手に自衛してくれる?」


と言い残し、校門を出たら一気にアドレナリンが出た。

言った、言ってやった。

その時なんだかより自分が好きになれた気がして

帰りにリップを買って帰った。


翌日バスケ部は負け無しの大勝だったらしく

僕は望にこれでもかというくらい奢らされたが

救ってくれた恩もあるため目を瞑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る